犯罪によって手に入れたことを知らずに受け取っていれば...
「ただ、ここに現金の扱いのややこしさがあり、プレゼントとして購入した別の物になっていれば、それを受け取っても犯罪にならない場合があります。盗品等関与罪は、被害に遭った人が騙し取られたりした物を取り戻す権利などを守るために定められているのですが、返せと言えるのは騙し取られたお金についてだけで、そのお金を使って買った物を渡せと言えるわけではないからです」
ただし、犯罪によって手に入れたという事情を知らずに受け取っていれば犯罪が成立することはないという。
「最終的には裁判所が受け取った時にどういったことを知っていたのかを認定して犯罪が成立するかどうか判断します。
そのため、詐欺マニュアルの公開や違法行為への関与についての報告があったという事情は、受け取った時に違法行為を知っていたことを推認するものではありますが、それだけで一律に犯罪の成否が決まるわけではありません」
違法に集めた金と知らずに犯罪とならなかった場合、受け取った金を返さなければならないかどうかは、民事上の返還義務の有無で判断されるという。
検察が起訴を断念した場合も含み、犯罪にならなかったことと返さなければならないかどうかは厳密には一致しないとする。
「ただ、結局大事になってくるのは違法な方法で手に入れたお金と知って受け取っているのかどうかという点になり、現実的には似通った判断になるでしょう。
そして、なにも事情を知らなかったなら、やはり受け取ったお金を返す必要はなくなります」
では、水商売の従業員は客が違法に金を集めていないか、「稼ぎ方」を把握していなければならないのだろうか。正木弁護士は「水商売に限らず、犯罪に関係することは避けるべきです」と述べる。
「盗品等関与罪などの犯罪に当たってしまう可能性もありますし、知らずとも盗まれたりした物を受け取っていれば倫理上の問題があります。
法律上はそこまで客の事情を把握する必要はありませんが、万が一にも自分のために犯罪を唆したりしてはいけません」