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「頂き女子りりちゃん」逮捕、貢がれたホストの責任は? 焦点は「認識の有無」...弁護士が解説

   マッチングアプリで知り合った男性から、恋愛感情を利用し現金約2700万円をだまし取ったとして「頂き女子りりちゃん」と名乗る女が詐欺容疑で逮捕された。複数報道によると、女性は「ホストクラブに使った」と供述している。

   ツイッター(現・X)では「お金を使わせた担当(編注:指名しているホスト)は何かの罪に問われたりする?」との疑問が呈された。

   客が違法に集めたお金を受け取ったホストクラブやキャバクラの従業員は、法的責任を問われるのだろうか。J-CASTニュースの取材に対し、弁護士は「盗品等関与罪に当たる可能性があります」と回答した。

  • 頂き女子りりちゃん(りりちゃんのYouTubeより)
    頂き女子りりちゃん(りりちゃんのYouTubeより)
  • 頂き女子りりちゃん(りりちゃんのYouTubeより)

「違法に手に入れた物をもらうことも違法」

   容疑者は、恋愛感情を利用し男性から金銭を得る「頂き女子」を自称し、SNSで活動していた。

   容疑者は、約2700万円の現金をだまし取った疑いが持たれている。大金を「ホストクラブに使った」と供述しているという。

   容疑者は、男性から金銭的な援助を受ける「パパ活」をしようとする女性を指南する「マニュアル」を販売し、詐欺のほう助をしたとして、すでに逮捕・起訴されていた。

   容疑者のXによると、20歳から「ホス狂い」(編注:ホストに没頭すること)をしている。2023年7月には「ホス狂い卒業できるように頑張ります」として誓約書と題した書面を掲載していた。

   容疑者は「20~22歳では300万ホストに使うと褒められて23歳からは1000万が当たり前になって24歳では1000万じゃ足りないって世界になって、もうだれか止めてって思っててはやく抜け出したくて、誰かにおかしいから辞めなって言って欲しかった」「私は今25歳で風俗と詐欺で何億か稼いで手元に1円も残らずホストさんの応援に使ってしまいました」としており、熱狂的にホストに貢いでいたことを明かしている。

   容疑者は、SNSで顔出しで活動しているインフルエンサーだ。マニュアルはインターネットで販売しており、いわゆる暴露系ユーチューバーの動画に出演して自ら手口を語ったこともあった。こうした事情から、容疑者の担当ホストが詐欺などでお金を稼いでいたことを知っていた可能性も否定はできない。

   Xでは、容疑者の「担当」は法的責任を問われないのかという旨の疑問が投稿され、注目を集めている。

   また、高額会計や高額な贈り物を貢がれていた大阪の人気キャバクラ嬢は、客の男性が経営している会社が詐欺に関与している疑惑が浮上し、「貢がれた金品を返すべき」などと炎上したことがあった。

   客の支払いや贈り物の元手が犯罪で得た資金だった場合、ホストクラブやキャバクラの従業員は、受け取った時点で法的責任を問われるのだろうか。

   9月22日、取材に応じた弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士は「どのような仕事に就いているかに関わらず、『盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物』を受け取る行為は、刑法256条に規定されている盗品等関与罪に当たる可能性があります」と回答。

   「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」は、盗んだり騙したりして手に入れた物やお金を指す。

「盗品関与罪上、現金の扱いは少しややこしいのですが、違法に手に入れた物をもらうことも違法という風に考えていただければ、大きく間違いはありません」

   「汚れた金」を受け取った場合、同条2項の盗品等有償譲受罪にあたり、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金が法定刑として定められているとする。

犯罪によって手に入れたことを知らずに受け取っていれば...

「ただ、ここに現金の扱いのややこしさがあり、プレゼントとして購入した別の物になっていれば、それを受け取っても犯罪にならない場合があります。盗品等関与罪は、被害に遭った人が騙し取られたりした物を取り戻す権利などを守るために定められているのですが、返せと言えるのは騙し取られたお金についてだけで、そのお金を使って買った物を渡せと言えるわけではないからです」

   ただし、犯罪によって手に入れたという事情を知らずに受け取っていれば犯罪が成立することはないという。

「最終的には裁判所が受け取った時にどういったことを知っていたのかを認定して犯罪が成立するかどうか判断します。
そのため、詐欺マニュアルの公開や違法行為への関与についての報告があったという事情は、受け取った時に違法行為を知っていたことを推認するものではありますが、それだけで一律に犯罪の成否が決まるわけではありません」

   違法に集めた金と知らずに犯罪とならなかった場合、受け取った金を返さなければならないかどうかは、民事上の返還義務の有無で判断されるという。

   検察が起訴を断念した場合も含み、犯罪にならなかったことと返さなければならないかどうかは厳密には一致しないとする。

「ただ、結局大事になってくるのは違法な方法で手に入れたお金と知って受け取っているのかどうかという点になり、現実的には似通った判断になるでしょう。
そして、なにも事情を知らなかったなら、やはり受け取ったお金を返す必要はなくなります」

   では、水商売の従業員は客が違法に金を集めていないか、「稼ぎ方」を把握していなければならないのだろうか。正木弁護士は「水商売に限らず、犯罪に関係することは避けるべきです」と述べる。

「盗品等関与罪などの犯罪に当たってしまう可能性もありますし、知らずとも盗まれたりした物を受け取っていれば倫理上の問題があります。
法律上はそこまで客の事情を把握する必要はありませんが、万が一にも自分のために犯罪を唆したりしてはいけません」