イタリアのメローニ首相が2023年9月20日(米東部時間)に行った国連総会の一般討論演説で、「私たちは、国家のない、国境のない、アイデンティティのない世界は紛争のない世界でもあると言う人々の、ユートピア的で利己的な物語を拒否しなければならない」とする訴えを展開した。
念頭においているのは、ロシアによるウクライナ侵攻と、イタリア最南端のランペドゥーサ島に大量の不法移民が密航船で押し寄せている問題だ。メローニ氏が特に強調したのが後者の問題だ。イタリアは欧州連合(EU)主導による難民受け入れを求めているが、ドイツはイタリア経由の移民受け入れを一時停止することを発表。EU内の温度差が際立つ形になっている。メローニ氏は人身売買業者の暗躍が背景にあるとして、国連が、業者に対して「世界的な戦争を容赦なく宣言する」ことの必要性を訴えた。
「国家」「理性」の「2つの要素が今も私たちを動かす基盤であるとするならば...」
メローニ氏は冒頭、国連総会という場には「国家」と「理性」の2つの意味があると説明し、「この2つの要素が今も私たちを動かす基盤であるとするならば」と前置きした上で、前出の「ユートピア的で利己的な物語を拒否しなければならない」という一節を述べた。さらに、
「それと同等の決意を持って、国際紛争を解決する手段としての武力の復活を阻止しなければならない。ロシアのウクライナ侵攻は、まさにそれを物語っている」
と続けた。
ランペドゥーサ島は、北アフリカのチュニジア沿岸から約150キロの位置にあり、移民の多くはアフリカから押し寄せている。メローニ氏は、その背景には人身売買業者があるとして、
「より良い生活環境を求めて潜在的に何千万人もの人々を生み出すその混沌の中に、犯罪ネットワークが潜り込み、絶望から利益を得て、簡単に何十億もの金を集める。大量の不法移民を組織しているのは人身売買業者だ」
などと指摘した。