「登園前の子ども」の責任、保育所側に問うのは「酷すぎる」 2歳児置き去り死で専門家警鐘...本当に必要な抜本的制度改正とは

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事件を防ぐためには「事務員を必置にする」法改正が必要

   鈴木教授は、子どもの安全確保の責任について、次のとおり見解を述べた。

「私達は、子どもの安全確保の責任について、どこまでが保護者側で、どこからが保育所側だと考えるのでしょうか。子どもとの関わり・発達に関しての専門職である保育士の先生に何をどこまで要求すべきなのでしょうか。『登園していない子どもの確認をする責任』とは、すなわち、登園の意思や登園時間を保護者に確認し続けることになります。そこまで現場の保育士にお願いするのであれば、当然のことながら、目の前の子どもたちの保育に全力を注力することと背反する要求をしているということを頭に入れておかねばなりません。保育所の規模・定員数・保育所の先生の人数によって、できることに限界は生じます。もし登園の有無を形式的・事務的な安全確認行為として徹底するのであれば、子どもに向き合う専門職としての保育士とは別に、保育所という組織体の安全管理制度として、専用の人員を配置しなければいけません」

   それゆえ、今回のような事件を防ぐためには法制度を整備して、各保育施設に事務員を置くことが必要だと見解を示した。

「それぞれの保育所が任意に努力して事務員を置きなさいということではなく、国が全国一律に法制度を整備し、財源確保・援助を行って、事務職員を必置にすることが必要です。(牧之原市で起きた3歳児の)バス置き去り事件をきっかけに、厚労省・文科省・内閣府から2022年11月14日付で『子どもの出欠状況に関する情報の確認、バスの送迎にあたっての安全管理等の徹底について』の通知が出ていますが、さらに一段階上の、子どもの安全確保のための抜本的な制度改正が必要だと思います」

   今回の事件で保護者への連絡をしなかった保育施設や保育士の責任を問う声もあることに対し、鈴木教授は

「子どもの命に係わる職業の尊さと責任の重さ、その職責に見合った抜本的な給与体系の再構築と研修制度等の充実が急務です。保育所保育指針には、『子どもが生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期に、その生活時間の大半を過ごす場』であること、『子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うため』の指針が定められています。全ての人にこの指針を読んでほしいです。こうした重要な役割を果たしている保育所への国の法的・物的・人的体制整備・バックアップは圧倒的に不足しています。こうした状況下で、事件の度に保育士の責任を問うことは、今後より大きな事件を引き起こすことになりかねないと考えます。

保育所や保育士の仕事への社会的重要性の位置付けの再構築と抜本的体制整備が先行することで、子どもに関わる施設への厳格な審査や保育士等の専門職の(知識・能力)基準を厳格化することの正当性が根拠付けられます。現状のまま現場保育士に負担を加重するような国の通知では、能力がありかつ意欲のある保育士等がバーンアウトして、現場から辞めていく(そのため能力と意欲のない職員が欠員補充される)状況を加速させてしまう」

と警鐘を鳴らした。

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