傷害を負わせると「金銭責任問われる可能性」
私人逮捕系YouTuberは、社会の関心の高まりを背景に増えてきているのか。
井上氏は
「それも言えると思います。ニュースとして取り上げられるのも大きいです。視聴回数や登録者数が上がる面と、世の中でずるいことがはびこっており、許せない気持ちから『自分もやってみるか』という面があります。その根拠として『私人逮捕が認められている』という言い訳が後からついてきたと思います」
と分析する。
視聴者側は、私人逮捕や世直し系の動画に対して、勧善懲悪を描くコンテンツに抱くような「スッキリ感」を抱くと分析する。
市民権を得つつある私人逮捕だが、危険や問題点をはらんではいないのか。
9月15日、取材に応じた弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士は「私人の現行犯逮捕が適法となるのは例外的な場合であり、私人が現場で即座に適法な逮捕か否かを判断することは非常に困難」だとし、次のように回答する。
「現行犯逮捕の要件を充たさない場合、刑事上、逮捕罪(刑法220条。3か月以上7年以下の懲役)の責任を問われる可能性があり、また、民事上の責任として、傷害を負わせた場合には損害賠償責任、名誉を毀損した場合には慰謝料請求など、金銭的な責任を問われる可能性があります」
では、どのような場合、私人逮捕ができるのか。
正木弁護士によると、刑事手続上認められている逮捕手続きは3つある。
①「通常逮捕」(裁判所の発布する逮捕状に基づく逮捕)
②「現行犯逮捕」(現に犯罪が行われている場合に逮捕状なくなされる逮捕)
③「緊急逮捕」(事前に逮捕状を用意する時間的余裕がないため先に被疑者を逮捕し、事後的に逮捕状を請求する方法)