「釣り禁止の看板もあり、マナー違反というよりルール無視」
放流目的などでブラックバスを運搬することは、外来生物法違反となり、重い刑事罰が科される。佐藤事務局長は、みなかみ町は利根川の源流域のため、バスがその水系に拡散する危険性も指摘した。
「釣り禁止の看板が立っており、農業設備として柵も設置されています。そこに入るのは、マナー違反というよりもルール無視ですね。車に乗って山の奥まで来て、細い道に車を止めて池に入ってくるわけです。不法侵入になりますが、農家の方に聞いたところ、釣り人を追い出すまではしないものの、苦々しく思っているそうです。池には、かいぼり実施のお知らせを出し、防犯カメラのようなものを置くなど、釣りができなくなるような提案もしたいと思っています」
生態工房は、東京都立井の頭恩賜公園内の「井の頭池」で13~17年度に3回にわたって、かいぼりを行った実績がある。井の頭池は、その後に水質改善も進み、「まるでモネの名画のよう」とツイッターに写真や動画が次々に投稿されて話題になった。これをきっかけに、かいぼりの依頼が全国から相次いでいる。
みなかみ町は2月、日本自然保護協会、三菱地所と連携協定を結び、生物多様性を回復させる取り組み「ネイチャーポジティブ」を始めた。三菱地所からは、10年間で計6億円の企業版ふるさと納税の寄付を受けることになっている。ため池のかいぼりは、その取り組みの1つで、実績のある工房が自然保護協会から誘いを受けて、池の再生に乗り出すことになった。
工房では8月、地元で行われたため池改修工事の説明会に合わせ、工事に先立って外来種を駆除するかいぼりの説明を行った。みなかみ町の企画課では9月19日、取材に対し、10月14日に町内のため池1か所でかいぼりを初めて実施し、以降は年に3、4か所を目安に行いたい考えを示した。
釣り人に対しては、「ブラックバスなどは繁殖力が強く、在来種を食べてしまうので、放流することは控えてほしい。崩れないようコンクリートの護岸になっており、落ちるとはい上がれない構造で、とても危険なので池に立ち入らないで」と呼びかけている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)