夕刊の「休刊ドミノ」が止まらない 道新は25万部あるも決断...背景に「セット割れ問題」

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   全国的に夕刊が姿を消すなか、北海道新聞と信濃毎日新聞が相次いで2023年9月末で夕刊の発行を休止することを発表した。

   「新聞用紙をはじめとする原材料費の高騰や輸送コストの上昇」(道新)などが原因。道新夕刊の部数は25万部を超えるが、朝刊と夕刊の両方を読んでいるのは3割程度。配達の効率が悪いという意味でもコスト高につながっている。朝刊以上に夕刊の方が部数が減るペースが速く、休刊につながったとみられる。

  • 「新聞離れ」以上に「夕刊離れ」が加速している(写真はイメージ)
    「新聞離れ」以上に「夕刊離れ」が加速している(写真はイメージ)
  • 「新聞離れ」以上に「夕刊離れ」が加速している(写真はイメージ)

信毎は夕刊なくなって朝刊は値上げ

   道新は9月1日朝刊の社告で夕刊の休刊を発表。

「新聞用紙をはじめとする原材料費の高騰や輸送コストの上昇などから、これまで通り夕刊を発行し続けることが難しくなりました」

と説明している。購読料は朝刊のみ3800円、朝夕刊セット4400円だったが、夕刊休止後は朝刊3800円になる。

   信毎が発表したのは9月12日朝刊の社告。購読料は朝刊のみ3400円、朝夕刊セット4400円だったが、夕刊休刊後は3900円に値上げする。値上げの経緯を

「用紙代、インキ代などの原材料費がかつてないほど上昇し、さらに印刷工場の電気代や新聞輸送費、配達に必要な人件費、燃料費も同様」

だとする一方で、夕刊休刊の理由について、充実させたデジタル版や朝刊を通じて「より広く、深く、詳しく伝える態勢づくりに注力すべきだと考え」た結果だと説明している。

「新聞離れ」よりハイペースな「夕刊離れ」

   道新についていえば、夕刊の部数は必ずしも少ないとは言えない。日本ABC協会がまとめた22年下期(7~12月)の平均販売部数によると、道新朝刊は84万2089部、夕刊は25万3415部。信毎は朝刊41万1884部、夕刊2万2194部だ。

   減少が続く部数は、コロナ禍の3年でも右肩下がりだ。ただ、そのペースは朝刊と夕刊で大きな差がある。19年下期をみると、道新は朝刊が94万0237部、夕刊が37万0373部だった。つまり、3年で朝刊は10.4%、夕刊は31.6%減っている。信毎は朝刊45万4813部、3万6033部。朝刊9.5%、夕刊38.4%の減少幅だ。

   新聞業界では、朝刊または夕刊の片方しか購読しない「セット割れ」が問題化してきた。朝夕刊両方を購読する「セット率」をみると、19年下期は道新39.4%、信毎7.9%だった。ところが、3年後は道新30.1%、信毎5.4%に下落している。「新聞離れ」よりペースが速い「夕刊離れ」が休刊につながったとみられる。

   道新の夕刊休刊は、他紙の動向に影響を与える可能性もある。朝日や読売といった全国紙の一部も道内で夕刊を発行しているが、複数社の新聞を扱う「併売店」が配達する場合もあるためだ。道新が抜けた後も他社の夕刊を配達できるだけのネットワークを維持できるかが課題になりそうだ。

   2紙が夕刊休刊を発表したことで、引き続き朝夕刊の両方を発行するブロック紙と県紙は、河北新報(宮城)、東京新聞(東京)、新潟日報(新潟、タブロイド判の「Otona+(おとなプラス)として発行)、北陸中日新聞(石川)、北國新聞(石川)、中日新聞(愛知)、京都新聞(京都)、神戸新聞(兵庫)、西日本新聞(福岡)の9紙を残すのみだ。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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