望まない妊娠を防ぐために
内服する薬「ピル」や子宮内に装着する「子宮内避妊具(避妊リング)」など、女性自身ができる避妊手段もある。
「日本で避妊と言えば、男性がコンドームを装着するイメージが強いです。しかしコンドームの避妊効果はさほど高くありません。きちんと装着していないことが多いですし、男性主導であるため女性が身を守る手段としては適していません。女性主導の避妊方法もあると知ってほしいです。むしろその方が避妊効果も高いのです」
なぜ導入が進まないのか、稲葉さんは認知度が低いことや金銭的ハードルの高さがあると説明する。女性向けの避妊具は、月経困難症などの症状緩和を目的とした場合には保険が適用されるが、避妊を目的とする場合は自費で負担しなければならない。
「経済的な理由で望まない妊娠をすることはあってはなりません。避妊のハードルを下げる国もあり、例えばフランスでは25歳以下の女性に対し、ピルや避妊リングなどの避妊手段が無償化されています。日本でも、保険適用なりなんらかの形で費用負担が軽減されれば、もう少し望まない妊娠を防ぐことができると思います」
現状、望まない妊娠に伴うトラブルを抱えた人々が頼るのは、多くの場合民間のサポートだ。地方で望まない妊娠をした場合、噂が広まることを恐れて自治体の相談窓口や地元の病院を利用できず、県をまたいで受診する人もいるという。
「望まない妊娠へのサポートとして、よく話題になるのは『赤ちゃんポスト』ですが、妊娠や出産自体にもリスクはあり、本来は妊娠中から母子の安全を考えられる相談窓口が必要です。望まない妊娠をした女性に対し無料で妊婦検診やお産を支援する民間団体もありますが、本来であればこうした取り組みを国が行うべきだと考えています」
また家庭内暴力(DV)を受けていたり、経済的に自立ができなかったりして、家庭内の性暴力から物理的に逃げられない人もいる。貧困などを理由に「パパ活」などの危険な売春行為をやめられない人もあるという。こうした望まない妊娠の背景にある社会問題に対する支援までできることが理想だと述べた。
日本では政府提供の妊娠に関する相談窓口はないが、こども家庭庁が全国の「性や妊娠などの悩みについての相談窓口」(https://sukoyaka21-youth.cfa.go.jp/counter_for_worries/)を紹介している。
【関連記事】弁護士の視点からも、「望まない妊娠」が抱える問題を掘り下げました。 「射精責任」をキーワードに考えます。(詳報:風俗店勤務で妊娠→赤ちゃん遺棄で有罪に 「射精責任」を弁護士と考える #望まない妊娠)。