ロシアが極東のウラジオストクで開いている国際会議「東方経済フォーラム」に注目が集まるなか、国営メディアが配信した日本に関する珍説が波紋を広げている。ロシアの日本学者の発言を借りる形で、「北海道は日本の領土ではない」「武士道はアイヌから学んだ」「切腹の儀式はアイヌから借りた」といった主張を展開している。
22年4月には、ロシアの国会議員が「北海道の全権はロシアにある」と主張したことがあり、ロシア側によるプロパガンダが加速する可能性もありそうだ。
先住民観光のシンポジウムを「最も純粋な形の偽善」と批判
記事は2023年9月11日に国営通信のRIAノーボスチが「日本政府の『先住民族保護』の偽善を専門家が解説」と題して配信。北海道大学観光学高等研究センターなどが、9月14日に 国際シンポジウム「先住民観光の挑戦」を開くことを批判する記事だ。シンポジウムのウェブサイトでは、
「カナダ先住民およびアイヌを代表するアーティストやリーダーたちの対話を通して、文化実践およびエンパワーメントの機会としての観光の可能性を考える」
とうたっている。
ロシア側の記事では、「ロシアを代表する日本学者のひとり」のアナトリー・コーシキン氏による見解として、シンポジウムを「最も純粋な形の偽善」だと批判。記事では、
「北海道は日本の領土ではなく、大和国の領土でもなく、アイヌとの数々の戦いで征服された植民地だ」
「アイヌは軍事的なことに非常に長けていて、勇気がある。武士道を含め、日本の軍事儀礼の多くはアイヌから学んだものだ。切腹の儀式は、日本人がアイヌから借用したものであることが、確かに知られている」
といった独自の主張を展開した。武士道は鎌倉時代に発達し、切腹は習慣としては平安末期以降に始まったと考えられている。アイヌが起源だとする根拠は不明だ。