ジャニーズ事務所創業者のジャニー喜多川氏による性被害問題は、同様の被害者を出さないための立法府や行政の対応も課題として浮上した。例えば、現行の児童虐待防止法では、ジャニー氏がしたような行為は「児童虐待」に当てはまらないため、被害者らは法改正を求めて署名活動を続けてきた。だが、2023年の通常国会では改正が見送られ、対応は秋の臨時国会に持ち越された。
被害者のひとり、カウアン・オカモト氏が23年9月8日に東京・丸の内で開いた記者会見では、法改正以外の対策も話題になった。大人から性加害を受けそうになったときの対処法や相談先に関する啓発活動の重要性だ。薬物乱用防止の啓発活動で使われている「ダメ。ゼッタイ。」のキャッチコピーを例に、分かりやすい教材作りと普及を訴えた。
現行の相談ダイヤルは「なかなか子どもが相談しづらいような内容」
オカモト氏ら被害者は、与野党双方でヒアリングを受け、法改正の必要性を訴えた。野党は改正に前向きなのと対照的に与党側は消極的で、法改正以外で可能な対応について聞かれる場面もあったという。オカモト氏によると、法改正が不要だとする人の発言のひとつが「(相談)ダイヤルがあるじゃないか」というものだ。
性被害に遭ったときの主な相談先としては、内閣府の「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」(#8891(はやくワンストップ))や、警察の「性犯罪被害相談電話」(#8103(ハートさん))などがある。
ただ、オカモト氏にとって現行の窓口は相談のハードルが高いと映った。
「いや、それは僕見たんですけど、なかなか子どもが相談しづらいような内容だったりとか、ゴリゴリ漢字でなんか市役所みたいなダイヤルなんですけど...。誰が電話するのそこに?みたいなところで。電話した後、誰が何をしてくれるの?補償何をされるの?僕が15歳のときにそこに電話したら誰が守ってくれるの?という話なんですけど」
薬物乱用防止の教材見て「それは騙されるわ!先輩から渡されたら食べちゃうよね」
オカモト氏は子どもが電話をしやすくなる環境作りを訴えており、例に挙げたのが薬物乱用防止の「ダメ。ゼッタイ。」キャンペーンだ。小学校の時にキャンペーンの教材に触れたことがあるという。教材では、漫画を交えながら一見して薬物だと分からないものが身近に流通していたり、先輩から勧められたりする可能性や、その断り方を説明。薬物を使用することの違法性や健康上の危険にも言及し、相談窓口の記載もある。オカモト氏は教材に触れて「それは騙されるわ!先輩から渡されたら食べちゃうよね」と納得したという。
「結局子どもが自分の身は自分で守らないと」とも。性加害の問題についても、被害を受けそうになったときの対処法や相談先を分かりやすくまとめた教材の開発・普及を望んでいる。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)