猫の飼い主の日常風景がSNSでちょっとした話題になっている。ときどき部屋に爪が落ちているのだという。それも指先から丸ごと落ちたかのような形状をしている。なじみのない人々からは「これなんですか?」などと驚く声が寄せられている。爪が剥がれてしまったようにも見えるが、問題ないのだろうか。
J-CASTニュースは2023年9月2日、まねき猫ホスピタル(大阪府守口市)院長の石井万寿美さんに見解を取材した。
「久しぶりに立派な爪をみつけた」
注目を集めたきっかけは、マンガ「岡崎に捧ぐ」などで知られるマンガ家・山本さほさんのX(旧ツイッター)での投稿だった。牙のようにも見える、大きな爪の写真が添付されている。
「猫飼いあるある これが部屋の色んなところに落ちてる」
取材に対し、山本さんは17歳の愛猫・トルコちゃんの爪だと述べる。爪切りをしているものの、1か月に1回ほどソファなどに落ちていることがあるという。
「最初に見た時は爪が剥がれたのかと思いびっくりしましたが、今は慣れっこでみつけたらポイしてます。久しぶりに立派な爪をみつけたのでツイートしてみたところたくさん反響があってびっくりしました」
猫と暮らしている人々からは「我が家もよく落ちてます」「あるあるですねー」など共感の声が寄せられている。
取材に対し、獣医の石井さんは「出血していなければ、大丈夫です」と述べる。石井さんによれば、猫の爪は多層構造で、落ちているのは外側の古くなった爪だという。爪がはがれる頻度には個体差がある。
「血が出ていないと爪が無くなることはありません。古くなった爪がはがれているだけです。イメージとしては、タケノコの皮がはがれるけれど、中の芯が残っているイメージです」
爪から血が出ていたら注意
完全に爪が抜けることは滅多にない。しかし猫の爪から血が出ていたり、爪のあたりが腫れたりしたときは注意を呼びかける。
「猫の爪が異常に長く成長し、爪が履いている足の肉球に刺さったりして痛みや不快感を引き起こすことがあります。 また、爪が屋内で適切なものを研ぐ環境がない場合、室内猫の場合は爪の適切なケアが必要です。 定期的なトリミングや爪の切り方を獣医師や猫のトリマーに相談することをお勧めします」
多くの猫は自然に爪研ぎをしているが、爪研ぎをしなければ肉球に刺さり化膿することもある。猫の爪の健康について、気を付けるべきポイントを3つ挙げる。
「1 爪の適切な研ぎ澄まし: 室内猫の場合、爪を研ぐためのキャットツリーや研ぎ澄まし用具を提供しましょう。 2 爪のトリミング: 爪が異常に長くなった場合、獣医師やトリマーに爪のトリミングを依頼することが大切です。正しい方法でトリミングすることで、爪の肉球への影響を最小限に抑えられます。 3 異常な挙動: 猫が爪に異常な興味を示したり、歩行に問題がある場合は、爪に関する問題がある可能性があります。爪を噛むなどは、精神的なことが多いです。早めに獣医師の診断を受けましょう」
一般的に飼い主も猫の爪を手入れしている。これは飼い主が猫を抱き上げたときに、爪が刺さらないようにするためだという。また、高齢な猫や病気の猫は爪研ぎをしなくなってしまうので、飼い主が代わっている。
「猫の寿命が、平均で約15歳です。シニアの猫と病気の猫は、爪研ぎをしなくなるということを飼い主さんは、知っておくことが大切です。最近、あまり歩かないよね、と思っていると肉球に爪が刺さっているということがあります。猫のステージにあった爪のケアをしてあげて、シニアになっても健やかに暮らしてほしいものです」