ジャニーズ事務所前社長の故・ジャニー喜多川氏による性加害問題をめぐって、ジャニーズ事務所が2023年9月7日に東京都内で会見を開き、ジャニー氏による性加害を認め、謝罪した。
ジャニーズファンの中には性加害のシステムに加担していたことを嘆くファンがいる一方、性加害を否定し、被害を告発した人を非難する人も多くいる。一体なぜなのか。専門家は「一部のドーパミン系高揚感に飲み込まれやすい方がこのような行為に走るようです」と指摘する。
「顧客は性加害の構図に組み込まれてる」
会見には藤島ジュリー景子前社長、新社長の東山紀之氏、ジャニーズアイランドの井ノ原快彦社長、顧問弁護士が登壇した。
ジュリー氏は、会見でファンに向けてどう説明、謝罪するか問われると「色々なことが起きている中で全く変わらずタレントを応援してくださっているファンの皆様には、本当に感謝の気持ちしかございません」「本当にご理解いただきたいのは、みんながそういうことがあってスターになっているわけではなく、一人ずつのタレントが本当に努力してそれぞれの地位を勝ち取っているので、そこだけは本当に失望も誤解もしていただきたくないです。これからも安心して応援していただきたいと心から思います」と涙ながらに訴えた。
ツイッター(現・X)では、今までファンへの直接の報告がなかったとして不信感を募らせるファンが相次いだ。
そのほか、「タレントを性加害のもとに搾取してそれを隠していた事。事務所が事実と認めた以上、そんな会社のFC(編注:ファンクラブ)なんか入りたくなかったと悔しくて仕方ない」「ファンでいると性加害に加担しているのと同じ気がして嫌だな」「顧客は性加害の構図に組み込まれてる」とこれまでの応援の後悔や、ファン継続のリスクを感じる人も少なくなかった。
「高揚感を邪魔するあらゆる存在を敵と認識してしまうので、攻撃的にもなり得ます」
一方で、事務所が性加害を認めたのにもかかわらず性加害を否定しようとする人や、会見での記者の鋭い質問に怒るファン、被害を告発した人を非難するファンが多くいる。
今回の事務所会見で、性加害を否定するなどのファンもいたのはなぜか。神奈川大学教授・大学院人間科学研究科委員長で心理相談センター所長の臨床心理士、公認心理師・杉山崇氏は8日、取材に対し「すべてのジャニーズファンがこのような行為をするわけではないのですが、一部のドーパミン系高揚感に飲み込まれやすい方がこのような行為に走るようです」と指摘する。ドーパミン系高揚感に飲み込まれやすい人の特徴として、「人に合わせること、人を許すことが苦手な人」「身近に尊敬できる方がいない人」「リスクに敏感で不安になりやすい人」をあげる。
「アイドルはファンにウキウキやワクワクといった高揚感を与えます。この高揚感は主にドーパミン系の高揚感と考えられています。
ドーパミンによる高揚感は癖になりやすく、ゲーム依存やギャンブル依存の背景もドーパミン系の高揚感が癖になってしまう事があるとされています。そして、ゲーム依存やギャンブル依存もそうであるように、高揚感を奪われることに激しく抵抗します。その脳内では高揚感を邪魔するあらゆる存在を敵と認識してしまうので、攻撃的にもなり得ます」
性加害を否定する人や、会見での記者の鋭い質問に怒るファン、被害を告発した人を非難するファンに関しては、「ジャニーズによる高揚感を邪魔されることに腹を立てた方々が事を起こしているように思えます」とする。
ジャニーズファンは「マナーの悪さ」が問題視されることも少なくない。2018年9月にはアイドルグループ「King & Prince」のメンバーが乗車する新幹線にファンが殺到し、JR仙台駅で6分の遅れが出る騒ぎがあった。インターネット上で一部ファンが批判され、JR東日本でも「ほかの乗客に配慮を」と呼びかけていた。その他、ジャニーズ所属タレント複数人がファンのマナーに苦言を呈したこともある。
杉山教授は、こうしたマナー違反のファンにある傾向も同様だとして、「高揚感にハマった方は見境がなくなるので、このような事を起こしてしまうのだと言えます」と指摘した。