ジャニー喜多川氏(享年87)の性加害問題に関してジャニーズ事務所が2023年9月7日に開いた会見で、新社長の東山紀之さん(56)に性加害を受けていたのかと問いただした記者の質問がSNSで「セカンドレイプでしょ」「これこそ加害行為」などと物議を醸している。
この質問の問題点は一体何か。専門家は「業界人なら普通はしない」と見解を示す。
「個人のプライバシーは守られるべき」
物議を醸したのは、過去に報じられた東山さんのハラスメント疑惑について、一部の記者が問い詰めた場面での質問だった。
東山さんが疑惑について釈明すると、記者は「デビューする前にジャニーさんからの加害的なものを他のメンバーも含め、加害を受けたという記憶はあるのかないのか」と続けて問いただした。
東山さんは「先ほども言ったように、僕自身は被害を受けてはないわけですね」と返答。会見の前半では、ジャニー氏の性加害を認識した時期に関する質問に対し「私自身は被害を受けたことがなく、受けている現場に立ち会ったこともなく、先輩たちからも後輩たちからも相談もなかった」と述べていた。
性加害を受けたかどうかという質問に対し、SNSでは「本人に性加害はあったのかとかセカンドレイプでしょ」「生中継されている会見の場で性加害の有無を聞くのってこれこそ加害行為ですよ」などと物議を醸した。
元自衛官の五ノ井里奈さんもX(旧ツイッター)で「公の場で聞くものではなく、たとえ被害者であっても、そうではなくても、個人のプライバシーは守られるべきであり、記者が問うものではない」と批判。社会学者の古市憲寿さんも「セカンドレイプにもつながりかねない」との見解を示している。
記者会見という場で性加害を受けたかどうかを尋ねることの問題点は何か。毎日放送(MBS)の元プロデューサーで同志社女子大学教授・影山貴彦氏(メディアエンターテインメント論)は8日、取材に対し、元々放送の仕事に携わっていたという観点から「業界人なら普通はしない」と見解を示す。
「たしなみと忖度は違うと思うんですね」
今回の記者会見では、(1)藤島ジュリー景子氏の代表取締役社長辞任(2)東山さんの新社長就任(3)被害者に対する謝罪(4)被害者への補償(5)事務所の名称存続――などの内容が明らかになった。
影山氏は、この会見には事務所再建や被害者への謝罪・補償について表明するという「主たる流れ」があったとした上で、「あえて『性被害を受けたのか、受けていないのか』を尋ねるということは、僕は主たる流れから外れてるなと思います」と説明。会見とは違う段階で個別に取材をし、記事にするのであれば、「それはありですよね。取材は自由ですから」と語る。
「タレントさんが性被害を受けたかどうかというのは、人間誰しも持つ興味好奇心で、それは誰しも隠せないところではありますけど、それをあそこで質問するというのは違うということですね」
影山氏によれば、場所を考慮した質問は忖度ではない。記者会見の大きな流れを意識した形で質問することについて、「それがマナーというか、ジャーナリスト・記者としてのたしなみだと思います。たしなみと忖度は違うと思うんですね」という見解を示した。
SNSで上がる「セカンドレイプになりかねない」「個人のプライバシーは守られるべき」という見解に対しても、影山氏は「共感する」と述べている。