ジャニーズ事務所が2023年9月7日に開いた記者会見を機に、同事務所とメディアの関係が変化する可能性も出てきた。これまでは、ジャニーズ事務所は好意的な記事や番組を出すメディアを優遇し、そうでない媒体、特に批判的な記事を出す媒体を「NG媒体」として多くの取材の場から事実上締め出してきた。
記者会見では「今後はそういうことなく、等しく公平に開かれた事務所として対応していただけるのか」と確認を求める質問に対して、社長に就任した東山紀之氏は「もちろんです」と応じた。東山氏は「皆さんからもそうであってほしい、との思いです」とも話した。発言を額面通り受け止めるとすれば、従来よりも多くの媒体の取材を歓迎するともとれる発言だ。
東山氏はメモを取り、ジュリー氏は首をかしげて横に振る
質問が出たのは、4時間超にわたる質問の終盤。共産党の機関紙「しんぶん赤旗」日曜版の記者が、
「東山さんのお話を聞いていると、今後はとても開かれた事務所になるのかな、という印象を持った。これまでのメディアコントロールということで言うと、各メディアには『ジャニ担』と言われるジャニーズ担当という方たちがいらっしゃって、自分たちにとって有利に書くようなメディアは優遇するが、そうでないところはNG媒体として排除するというようなことが行われていたと思う」
などと現状を説明した。この時点で東山氏は時々下を見てメモを取っていたのに対して、藤島ジュリー景子氏は首をかしげて数回横に振った。ジュリー氏は記者の現状認識に同意していない可能性がある。
続く質問部分では、記者は
「そういう(開かれた事務所になるという)ことでいうと、今後はそういう(メディアを選別する)ことなく、等しく公平に開かれた事務所として対応していただけるのか、確認させてほしい」
述べ、東山氏は
「もちろんです。そのつもりで僕らもいますので...。皆さんからもそうであってほしい、との思いです」
と答えた。
取材案内に返信するとPR会社「間違って送った」「すでに満員」
ジャニーズ事務所を日常的に取材できるのはスポーツ紙やテレビ局の情報番組、芸能専門のウェブメディアなど必ずしも多くないとみられている。逆に週刊誌など多くの媒体を、いわゆる「NG媒体」に指定しており、J-CASTニュースもそのひとつだとみられる。「NG媒体」の定義ははっきりしないが、基本的にはジャニーズ事務所のタレントが出演するイベントの取材案内は送られてこない。まれに送られてくることがあるが、取材を申し込むとPR会社から「間違って送ってしまった」、締め切り前にもかかわらず「すでに満員になった」「急に取材スペースがなくなった」といった電話が来て取材を断られる。この場合、ジャニーズ事務所が明示的にNG媒体にしているのか、PR会社が忖度(そんたく)した結果なのかは明らかではない。
PR会社を通さずに「NG媒体」扱いを受けたこともあった。例えばJ-CASTニュースがジャニーズ事務所に取材を申し込んだが返答せず、他の媒体には回答したことが複数回あった。
例外もいくつかある。NHK紅白歌合戦のリハーサルのように、ジャニーズ事務所以外の歌手も多数出演するイベントで、ジャニーズ事務所所属のグループを取材できる機会がある。それ以外にも、ジャニーズ事務所に関係する事柄について、個別に問い合わせると回答が得られる場合もある。今回のように、記者会見を開くことが広く報じられ、それをもとに問い合わせれば現地取材ができることもある。
今回の記者会見は通常の芸能イベントと比べると異質で、最初に質問したのは「赤旗」の別の記者。テレビ東京→TBS→TBS→フジテレビと続き、普段からジャニーズ事務所と近い芸能リポーターやスポーツ紙記者が指名されたのは、それよりも後だった。
東山氏は
「僕は、やはりすぐに記者会見にも出られるし、皆さんと対話できる機会というのは、これまでよりも多くなる、多くしなければ いけないとも思っている」
とも話しており、9月7日の会見のような顔ぶれが日常のものになるかどうかもポイントになりそうだ。
ただ、所属タレントに都合に悪い質問をしたり、批判的な記事を書いたりする「NG媒体」を排除することは、芸能事務所がタレントを守る上では意味があると考える向きもある。そのため、多くの芸能事務所やPR会社が「NG媒体」を除外した形でメディアの取材を呼びかけている。今回の動きがジャニーズ事務所以外に波及するかは未知数だ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)