広島市内の食堂運営会社「ホーユー」が高校などの給食業務を次々に停止した問題で、同社の社長が「食材費高騰などのコスト増を価格転嫁できず、ビジネスが成り立たなかった」とマスコミ各社に説明したと報じられている。
ネット上では、そもそも給食業務の落札額が低いと話題になっており、行政の安すぎる発注にも原因があるのではないかとの指摘が出ている。どんな課題があるのか検証した。
山口県では、月14万円で調理業務を請け負っていた高校も
「給食は、9月から別の業者さんに移行し、変わらずに提供しています。移行の手続きは、現在進めていますが、まったく影響はないですね」
ホーユーに2023年8月末まで給食業務を委託していた山口県のある県立高校定時制の教頭は9月7日、J-CASTニュースの取材にこう話した。
報道によると、ホーユーは、1日ごろから地元広島県内の公立高校7校で寮などの給食業務を停止し、学校が連絡を取れなくなった。全国各地に会社の拠点があるため騒ぎが拡大し、計150施設のほぼ半数で給食がストップしたという。各学校などでは、急きょ弁当に切り替えるなどして対応している。
食材費高騰については、広島県教委の補助制度があったが、社長は、それでは足りないとマスコミの取材に答えたという。経営不振のため、近く破産申請を広島地裁に行うとも報じられた。
入札情報の検索サイト「エヌ・サーチ」で調べると、ホーユーは、全国の高校や警察学校、自衛隊駐屯地で給食業務をいくつも落札している。
うち前出の山口県立高校定時制については、4月~24年1月の給食調理業務を140万円強で3月に落札していた。月14万円ほどで調理業務を請け負っていたことになり、パート1人を雇うのが精一杯になる計算だ。
この落札結果は、ツイッター(X)上などで話題になり、「安すぎる」「既に黄色信号が灯ってたんでは」と驚く声が上がり、「発注するほうにも問題あるだろ。妥当性どうやって確認したんだよ」との指摘も出た。
「過去の実績を踏まえ、適正な予定価格にしています」
食堂運営会社ホーユーによる給食調理業務について、山口県教委の学校運営施設整備室は9月7日、取材に対し、県立高校8校、青少年自然の家2か所で8月末まで続いていたと答えた。
県内では、調理員を雇って直営の給食にしている施設もあるが、高校8校などが業者と委託契約していることについては、こう説明した。
「人件費などのコストもかかりますので、経済的に運営することも必要です。業者に頼んだ方が調理員を確保できるということもあると思います」
エヌ・サーチでは、前出の県立高校定時制について、調理業務の落札額が県教委の予定価格とほぼ同じレベルになっている。予定価格が安いかについて、「過去の実績を踏まえ、適正な価格にしています」と説明した。
高校8校などで給食業務の停止はあったものの、9月からすぐに別の会社が引き継ぎ、影響は出ていないと説明した。通常は、入札には時間がかかるが、契約をどうするか手続き中だとしている。
ホーユーの本社がある広島県では、県立高校6校で単独やエリアごとに業者を入札にかけている。
県教委の学校経営戦略推進課は7日、取材に対し、給食調理業務にかかるのは、ほぼ人件費だとし、パート代の支払いなどができるか確認してから契約していると説明した。「いくらで落札するかは業者の判断になりますが、予定価格は適正に算出しています」と強調した。
食材費については、入札に入れていないが、契約時に朝食は300円以内などとした仕様書を示しているという。費用については、生徒の保護者らが業者に支払うことになっている。
高校6校では、調理業務が停止したため、学校が手配した弁当で緊急対応を行っており、同時に新しい業者を検討中だという。以前から調理業務を業者に委託しており、直営については、現在まで検討したことはないとしている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)