国民民主党の代表選が2023年9月2日に行われた臨時党大会で投開票され、玉木雄一郎代表が前原誠司代表代行を破って続投を決めた。主な争点のひとつが、玉木氏が「穏健な多党制による連立」を訴えたのに対して、前原氏が「非自民・非共産による野党結集」を主張してきた点だ。
玉木氏の路線が大筋で信任されたことで、連立をめぐる動向が活発化している。「自民、連立協議を検討」という報道も出た。だが、玉木氏は代表選直後に「今、わが党が連立を共にできる政党は存在しない」と発言しており、連立入りには選挙区の候補者調整が最低限必要だと話している。自民が独自候補擁立を断念する形で国民と候補者を調整するのは、自民党へのメリットが分かりにくい分、ハードルが高い。玉木氏の言葉を額面通り受け止めるとすれば、連立入りは現実味が薄いとの見方もできる。
「今、わが党が連立を共にできる政党は存在しない」
代表選の結果は翌9月3日の各紙が報じたが、扱いが特異だったのが読売新聞。1面トップに「国民代表に玉木氏再選 自民、連立協議を検討」の見出しを掲げ、本文では
「自民党は、与党と協調する玉木氏の路線が信任されたとみて、国民に自公連立政権入りへの協議を打診する方向で検討に入った」
と説明した。
だが、代表選直後の記者会見では連立入りに関する質問が相次ぎ、玉木氏は否定的な発言を繰り返した。
玉木氏は、連立入りには最低限2つの条件を満たす必要があると説明。ひとつが、政策が「ある程度の幅の中で一致する」ことで、もうひとつが「選挙区調整がちゃんとできる」ことだ。この2点を踏まえて、現段階での連立入りを否定した。
「その意味では今、どの党とも選挙区がだぶっており、今、わが党が連立を共にできる政党は存在しない」
「与党から連立入り、閣僚になることを打診されても受けない、という理解でいいのか」という問いには、「私は閣僚になることはありません」。党内の玉木氏以外の人が入閣する可能性については「そういう話は一切ない。先ほど申し上げた通りで、我々が連立を組めるような政党は、与野党を超えてない」と応じた。
擁立見送り説の参院山形選挙区、直前に主戦論が巻き返す
国民民主が2月の党大会で決めた活動方針には、「政策本位で協力できる政党とは与野党を問わず連携」することをうたっており、「与野党を問わず」という点も選挙戦で論点になった。この点を念頭に置いた
「国民民主等は野党なのか」
という問いには、
「どこからどう見ても野党」
と答えた。
玉木氏が条件としてあげる選挙区の調整、具体的には、国民の候補者のために自民・公明が擁立を見送るのは、ハードルが高いのが実情だ。これに近いことが起きたのが22年の参院選だ。
山形選挙区(改選定数1)で、国民現職の舟山康江氏が3選を目指す中で、自民では対抗馬の擁立を見送る議論が出た。舟山氏の知名度が高いことに加えて、22年度の当初予算に国民が賛成し、政策面で連携する部分もあったことが背景にあるが、公示日が近づくにつれて自民党内からは主戦論が噴出。結局は自民が独自候補を擁立し、舟山氏に敗れたという経緯がある。
「自公を見ていると、我々までの候補者調整をするなんて、とてもじゃないけど思えない」
前原氏は、元々の主張に加えて、候補者調整の問題を理由に連立入りはないとみている。党大会後に報道陣の取材に応じた前原氏は、引き続き国民で活動するかを問われて「もちろんです」。その上で「私はノーサイドだと思っているし、私の信念は変わらない」とも述べた。「非自民・非共産」の看板を維持するか確認されると、
「これは、持ち続ける。これは30年間の国会議員で変わることはない」
と強調した。
結党時に綱領とともに発表された「理念と政策の方向性」では、野党連携のあり方について
「今回の新党結成は、野党のバラバラな現状に終止符を打ち、かつ、右か左かといった二元論的な対立を乗り越え、社会全体を包み込む温かさをもった政治勢力の結集をはかるための『第一歩』です」
とうたっている。前原氏は投票直前の演説で、この文言に言及している。この経緯を念頭に、
「連立入りするとなると、党の綱領とは外れる行動になるという認識を持っている」
と述べた上で
「そうならないと思う」
とも話した。さらに、候補者調整の問題に触れ、連立の可能性に否定的な見方を示した。
「玉木さんも、自民党(との連立政権)に入るためには政策と、候補者調整ということをおっしゃっていた。自公を見ていると、我々までの候補者調整をするなんて、とてもじゃないけど思えないので、そこはないのでは」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)