空気の流れを調べる「風洞実験」を行ったとする小学生の自由研究が注目を集めている。実験では、ミニカーに加湿器の蒸気を当て、どのような空気抵抗が生まれるのか観測した。おもちゃのトラックに流れた蒸気は、積載物に当たると綺麗な渦を描く。この実験風景を伝える父親の写真が、X(ツイッター)で3万8000件を超える「いいね」が寄せられるなど大きな反響を呼んだ。
J-CASTニュースの取材に応じた父親は2023年8月31日、楽しそうに実験に取り組む我が子の姿を見ることができて良かったと振り返る。詳細な実験方法などを取材した。
父親の仕事関係から興味を持つ
注目を集めたのは、Xユーザー・nikqさん親子が夏休みに行った自由研究だ。父親のnikqさんは取材に対し、実験の背景を次のように説明する。
「もともと私がレースゲーム制作に携わっているのもあって自宅のTVで風洞実験についてのyoutubeを見ていたところ、夏休みの自由研究としてこれを自宅でやってみたいと言い出し、今回の実験を行いました」
nikqさんは、ゲーム制作会社で画像処理エンジニアをしている30代後半の男性だ。実験を行ったのは、読書やダンス、体操が大好きな小学校高学年の娘。学校からは、「現象を事前に予想してから実験し、違いを観察する」などの自由研究を行うよう呼びかけられていた。娘にとって、風洞実験はちょうど良いテーマだった。
「特に理由や狙いなどは無かったのですが、私は、女の子でも、理系的な物理現象やその観察への好奇心を持ち続けて欲しいと思っているのでテーマ設定に対して反対する理由もなく、すぐに手伝いました」
nikqさんによれば、パソコンのファンと加湿器があれば手軽に試せる実験だという。手元には知人から譲られたトミカやホットウィールなどのミニカーがたくさんあったため、車の形の違いによる空気の流れ方を観察した。
どうやって実験したのか
nikqさんによれば、空気の流れを調整する装置「風洞」は主に3つの要素で構成される。真っすぐ整った空気の流れを作る「整流板」、空気の流れを観察する「実験部」、空気を送り込む「送風機」だ。nikqさん親子は、加湿器の蒸気で空気の流れを可視化し、牛乳パックに透明プラスチックの窓を設けた実験部に蒸気を流し込み、その様子を観察した。
実験で参考となったのは、長崎大学大学院工学研究科総合実践教育研究支援センターが公開している「可視化風洞の作り方」と、兵庫県立神戸高等学校の生徒らが公開した論文「自作風洞実験器を用いた空気の流れの可視化~ 紙飛行機の形状と空気の流れ ~」だったという。
長崎大学が公開している手法では、たくさんのストローを蜂の巣のように束ねて空気の流れを整えている。しかしこの装置の制作は手間がかかるため、手軽にできる方法を考えた。
「一番簡単かつ影響が大きいのは、ファンは陰圧で(引き込み側で)利用することです。引き込み側なら、うまくやれば整流板なしでもスモークは線になってくれます」
実験では、流れを分かりやすくするため、風速や蒸気の濃さを調整することが重要だ。nikqさんは「楽しそうに調整する子供の表情は輝いていて、見られてとても良かったです」と振り返る。
「また、やってみると好奇心がいろいろに出てくるようで、当初想定しなかったクルマなどもどんどん試しはじめました。 古い車、働く車と、現代の車、レースカーは、風速が同じでも全く流れが違います。 この差をはっきりと目で見て『だから今の車は燃費がいいのかー』と、実感として体験できたようです。 目の前で観察のできる、お手軽物理実験の価値を再実感しました」
SNSで実験が話題になると、車に興味を持っているから息子の話ではないかといったコメントもあったが、nikqさんはこう述べる。
「知的好奇心に性別は無いはず。女の子だって理科やクルマに興味を持って良い。 大人が、子供の興味関心を伸ばしてあげられたらいいなと思います」
nikqさんはたくさんの人から「やってみたい」という感想が寄せられたといい、「皆さんぜひ本当に試してみてほしいです」と呼び掛けた。
子供の夏休み自由研究、風洞実験やりたいって言うから、手伝ったら、結構マジな渦が撮れて興味深い pic.twitter.com/rKUpkYwTre
— nikq (@nikq) August 30, 2023