8万円ベビーカーは「超高級」?ネット論争に アンケートから見えた今どきの子育て事情、 識者と読み解く

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   あなたは、8万円のベビーカーをどう感じますか?──。

   J-CASTニュースは2023年8月、読者アンケートをもとに、ベビーカーの相場を起点とした育児をめぐる経済情勢について、ベビー用品の開発・販売を行うコンビ(東京都台東区)と、シンクタンク「浜銀総合研究所」(神奈川県横浜市)の遠藤裕基主任研究員に話を聞いた。

  • 写真はイメージ
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  • J-CASTニュースが実施した読者アンケートの回答、2023年6月14日~8月7日に寄せられた票を集計した
    J-CASTニュースが実施した読者アンケートの回答、2023年6月14日~8月7日に寄せられた票を集計した
  • 赤ちゃん物価指数(提供:浜銀総合研究所)
    赤ちゃん物価指数(提供:浜銀総合研究所)
  • 浜銀総合研究所の遠藤裕基氏(2023年8月7日撮影)
    浜銀総合研究所の遠藤裕基氏(2023年8月7日撮影)
  • ベビー用品の開発・販売を行うコンビが取材に答えた(2023年8月18日撮影)
    ベビー用品の開発・販売を行うコンビが取材に答えた(2023年8月18日撮影)
  • 左からコンビのプレミアムモデル「SUGOCAL Switch(スゴカルスイッチ)」、コンパクトモデル「SUGOCAL minimo」(2023年8月18日撮影)
    左からコンビのプレミアムモデル「SUGOCAL Switch(スゴカルスイッチ)」、コンパクトモデル「SUGOCAL minimo」(2023年8月18日撮影)
  • 左からコンビのプレミアムモデル「SUGOCAL Switch(スゴカルスイッチ)」、コンパクトモデル「SUGOCAL minimo」(2023年8月18日撮影)
    左からコンビのプレミアムモデル「SUGOCAL Switch(スゴカルスイッチ)」、コンパクトモデル「SUGOCAL minimo」(2023年8月18日撮影)
  • こだわりが詰まったコンビのベビーカー(2023年8月18日撮影)
    こだわりが詰まったコンビのベビーカー(2023年8月18日撮影)
  • こだわりが詰まったコンビのベビーカー(2023年8月18日撮影)
    こだわりが詰まったコンビのベビーカー(2023年8月18日撮影)
  • こだわりが詰まったコンビのベビーカー(2023年8月18日撮影)
    こだわりが詰まったコンビのベビーカー(2023年8月18日撮影)
  • こだわりが詰まったコンビのベビーカー(2023年8月18日撮影)
    こだわりが詰まったコンビのベビーカー(2023年8月18日撮影)
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  • J-CASTニュースが実施した読者アンケートの回答、2023年6月14日~8月7日に寄せられた票を集計した
  • 赤ちゃん物価指数(提供:浜銀総合研究所)
  • 浜銀総合研究所の遠藤裕基氏(2023年8月7日撮影)
  • ベビー用品の開発・販売を行うコンビが取材に答えた(2023年8月18日撮影)
  • 左からコンビのプレミアムモデル「SUGOCAL Switch(スゴカルスイッチ)」、コンパクトモデル「SUGOCAL minimo」(2023年8月18日撮影)
  • 左からコンビのプレミアムモデル「SUGOCAL Switch(スゴカルスイッチ)」、コンパクトモデル「SUGOCAL minimo」(2023年8月18日撮影)
  • こだわりが詰まったコンビのベビーカー(2023年8月18日撮影)
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  • こだわりが詰まったコンビのベビーカー(2023年8月18日撮影)
  • こだわりが詰まったコンビのベビーカー(2023年8月18日撮影)

「8万円のベビーカー」高い?標準的?

   ある写真週刊誌が6月、芸能人夫妻が愛用している8万5000円ほどするというベビーカーを「超高級」と報じた。X(ツイッター)では標準的な値段だとツッコミが寄せられ、様々な意見が広がった。

   J-CASTニュースは、「【読者アンケート】8万円のベビーカーは『超高級』か 週刊誌報道で議論に...あなたが考える予算は?」と題した記事を公開。併せて読者投票を実施し、8月7日15時までに730票寄せられた。

   結果は「標準的だと思う」が55.48%と半数以上を集め、次いで「高いと思う」が40.68%、「安いと思う」は3.84%。

   「実際に、あなたがベビーカーを購入する時の予算はいくら?」とも聞いた。658票のうち、上から「4~5万円台」が29.64%、「2~3万円台」が25.08%、「6~7万円台」が20.36%。「8~9万円台」は13.37%と4番目だ。

   浜銀総研・遠藤氏は、結果を受けて「見方としては凄く自然」と見解を述べた。予算の票が低価格に寄った点は、「あくまで予算なので、『このぐらいで買えたら良い』みたいなのが多分に含まれている」とみる。

   一方、購入する際には機能面や赤ちゃんのフィット感など考慮したくなり、結果として、予算を上回る物を買わざるを得ない状況にもなりうる。「そうなると8万円でもそんなにおかしくない」と捉えられているのではないかという。

   親心からすると、「無い袖は振れないけれど出来る限り自分に使うお金を節約して、子供のために良い物を買ってあげたい」。「ただ、もちろん予算で考えてるよりも価格が高くなってしまうので、当然家計としては苦しい」と述べる。

子育て世帯の負担感、昨年ごろから強まる

   現状、物価上昇のあおりも受けている。浜銀総研が6月末に発表した「赤ちゃん物価指数」は各メディアに注目された。遠藤氏が第一子誕生に伴いベビー用品の値上がりを実感し、子育て世帯の負担感の強まりを数値で示す狙いで作成したという。

   消費者物価指数のうち粉ミルク、紙オムツ、乳児服、人形、玩具自動車が抽出された指数だ。

   リリース時の最新データにあたる5月の数値は、消費増税の影響があった15年1月以来の高い伸びだったと報告されている。遠藤氏によると、6月に至っては赤ちゃん物価指数が前年比で9.3%増。消費者物価指数の3.3%増と比べて3倍弱の伸び率になった。

「やはり赤ちゃんを育てている世帯の負担感は強いんだろうなと。特に昨年くらいから強まってきているんだろうなということが読み取れる」

   1年間ほどは比較的高い伸びが続くという。メーカーが価格転化する動き自体は悪くないとするも、賃上げが追い付いておらず、消費全体が縮小する可能性が懸念され、育児のコスト増が少子化に拍車をかけるリスクも考えられると述べた。

   オムツの使用量を調整するのが難しいように、ベビー用品は「節約したくても出来ない」側面があるという。子育て世帯の事前準備は重要として、赤ちゃん物価高騰には政府や自治体の対応が求められると遠藤氏はいう。

   「『異次元の少子化対策』という枠組みではなく、物価上昇対策としてすぐにやれるものをやってほしい」と、オムツや粉ミルクの現物支給あるいはクーポン配布といった対策を提言した。

「何よりもスピーディーに、赤ちゃんにとっての必需品というのを消費者に、赤ちゃんを育てている世帯に届けるということが、重要なのかなと思います」

企業努力も「流石に難しい状況」で値上げ

   子育て世帯の負担感をめぐり、コンビ広報は、輸送コストなどを少しでも削減できるよう努めてきたと明かす。ベビーカーの発送形式を、幌だけ後付けさせる客組(きゃくぐみ)に変えて梱包サイズの丈を短くしたと例示する。

   しかし、「コストカット出来る所は努力を積み重ねてきましたが、さすがに難しい状況になってしまって」。22年秋に8年ぶりの価格改定をした。9割近い製品が3~14%ほど値上げとなった。

   背景には、原油価格高騰などによる原材料費の値上げと物流費の高騰による生産コストの大幅上昇。ベビーカーは中国の自社工場で作っているため為替の影響も避けられない。国内流通のベビーカーはほぼ海外製のため、今の状況が続くと生産拠点の変更を検討する企業も出てきうるという。

   先のアンケート記事のコメント欄には、ベビーカーはなぜ高いのかとの疑問も寄せられていた。そもそもベビーカーは安全性を証明するSG基準で「A型」「B型」と分類され、早くて生後1か月から使える前者の方が高価格とされている。

   A型が主力のコンビは、前提として「価格と安全面が比例するわけではない」と強調する。

「こだわりの機能」とは?

   同社の「スゴカル」シリーズでいえば超軽量モデルは3万円台。6万円近いスタンダードモデルは、「こだわりの機能や素材、技術を集約した物で、自信をもってお勧め出来るというところもあり、このお値段で販売しています」という。

   広報によると、約15年前は軽さか押しやすさか選ばせるような「二極化」状態で、軽さを重視する人が6割ほどの感覚だった。2015年にスゴカルの前型となる軽量で操作性の良い商品が発売されたのち、今に至る。

   グレードの違いというより、乗り心地や操作性など細分化が進んだ機能と、重量とのバランスをそれぞれ追求したラインアップだ。価格帯で異なる点は、対面・背面の切り替えハンドルに連動する後輪側タイヤロックの有無が大きい。

   プレミアムモデルを例にすると、走行を安定させる大きなタイヤ、サスペンション、シートは衝撃吸収素材「エッグショック」を用い、赤ちゃんに触れる箇所は吸湿速乾性を持たせつつ洗濯機で丸洗い可能──といった機能が搭載されている。「品質を妥協することは絶対ない」という。

「購入自体を後悔させない」取り組みも

   生産コストを下げるのにも限界があり、「購入自体を後悔させないようなサービス」を考えているともいう。「プレママ・プレパパレッスン」をはじめ動画配信や、ベビー用品専門店にスタッフを派遣するといった形で、納得して使用してもらえるよう製品選びを手伝っている。

   ベビーカー選びについては、居住環境や生活シーンから想像する考え方を提案している。主な移動手段、保育園までのルートなども考慮できる。そのなかで予算や重量などの優先順位を考えると、自分に合った製品を選びやすいという。

   昨今は、購入前にベビーカーを試用する選択肢もある。他社のレンタルサービス「ストローラートリップ」や「レンティオ」、「ベビカル」に採用されている。

   一方で中古品をめぐっては、「ベビーカーにも寿命がある」と訴える。目に見えないひずみが出てくるといい、「リユースサービスを利用する場合は、安全性が確かかどうかを見て欲しい」とする。

   公的な基準はないものの、コンビは標準使用期間を新品購入から「5年間」と独自に設定。遥かに超過する商品は使用中止を呼びかけている。

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