「心がしんでいく」絶えないセクハラ患者、我慢強いられる看護師 病院の「日常」に共感集まる

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   血圧を測りに来た女性看護師の胸に、患者の手が触れた。患者の男性は「ああごめん あたっちゃったね」と、何でもないような口ぶりで謝る。看護師は何も答えない。患者の腕を身体に触れない位置に誘導したのに、いきなり腕を伸ばされたのだ。

   「心がしんでいく」

   ――このような看護師の日常を描いたイラストがX(旧ツイッター)で注目を集めている。J-CASTニュースの取材に対し、作者で看護師のソファちゃんさんが2023年8月28日、現場で苦慮していることを明かした。

  • 「心がしんでいく」絶えないセクハラ患者、我慢強いられる看護師
    「心がしんでいく」絶えないセクハラ患者、我慢強いられる看護師
  • 看護師のソファちゃんさんの公開したイラスト
    看護師のソファちゃんさんの公開したイラスト
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看護職へのセクハラや暴力は「日常茶飯事」

   厚生労働科学研究として実施された「看護職等が受ける暴力・ハラスメントに対する実態調査と対応策検討に向けた研究」によれば、2018年度に看護職などに対し患者やその関係者による暴力やセクシャルハラスメントが報告された施設は8割を超える。さらに、まだ報告されていない潜在的な暴力などがあると、7割超の看護管理者らが回答している。調査は941施設を対象にした。

   冒頭で伝えたワンシーンは、決して珍しい出来事ではない。イラストには看護職とみられるユーザーから「ほんとに日常茶飯事です」「これが日常である事を知って欲しい」「同じことされたのを思い出しました」などと共感の声が寄せられている。

   イラストには偶然を疑う声などもあるが、ソファちゃんさんは実体験をもとにこう伝える。

「この絵だとテーブルがあるので、身体に触れない位置に腕を誘導し置いてもらい、それから測定してマンシェット(編集部注:血圧計の腕に巻きつける部分)を外そうというとき突如手が伸びてくるのが 私のよくあるパターンです。
(気をつけてはいるのですが、ナースコールがずっと鳴ってて気を取られたり、次の患者対応や段取りで頭がいっぱいな時もあるので、隙だらけなのは否めません)」

「自分が我慢すれば、仕事は回る。他の患者のケアもできる」

   取材に対し、ソファちゃんさんは21年2月ごろから看護現場を題材としたイラストを描いていると振り返る。ただし、内容はフィクションであり実在のモデルはいないとしている。

「反応をもらえることが嬉しく、承認欲求を満たすための投稿をしていました。2022年ごろから、少しずつ描くことの方向性を変え、今は、日常をただただ綴る、反響をいただくことより、自分の日常を振り返ったり、誰かに『そうなんだ』と思ってもらえることを目的に絵を描いています」

   イラストには続きがある。看護師が上司に被害を訴えると、「主治医と私で注意しておいたからもう大丈夫!安心してね」と伝えられる。看護師はさらに「心がしんでいく」という。

「翌日も絵の中の看護師は、自分の胸を故意に触ってきた患者がいる病棟に行かなければなりません。加害者は、チャンスをもらい、引き続きケアを受けられます。担当を変えてもらったとしても、顔を合わせないようにすることは困難です。忙しい病棟では、担当患者のナースコール以外でも対応しなければならないので、当然被害者が加害者の対応もすることになります。
即刻退院にする病院もあるのでしょうが、まだ勤務したことがないのでわかりません。1度目の性加害はイエローカードなのです。でもこの注意してくれて、担当を変えてくれるという対応ですら、良い対応として賞賛されています」

   仮に警察を呼んだとしても、その対応に時間を割く余裕もない。

「多くの患者を受け持ち、分刻みで行動しているため、自分のために他患者への対応を疎かにはできません。患者が痰が詰まって苦しいのに、警察の対応をしていたので伺えませんでした、なんてこともあり得てしまいます」

   看護の現場は人手不足だ。自分の被害を訴えるために他のスタッフに変わってもらうことは難しい。ケアの質も落ちかねない。管理者を通さずに警察を呼ぶこともできない。ソファちゃんさんはこのような状況を訴え、「他の患者に迷惑をかけてまで、自分の被害のことを解決しようなんてできない」などと述べる。

「自分が我慢すれば、仕事は回る。他の患者のケアもできる」

「まさかそんなはずはない」患者家族からも理解されず

   先述の「看護職等が受ける暴力・ハラスメントに対する実態調査と対応策検討に向けた研究」でも、次のような現場の声が寄せられている。

「本人は、セクハラだと分からないように触れてきており、注意しにくかった」
「利き手が使えず介助を要するが男性職員は限りがあり、注意をしても、セクハラと伝え ても、『わるいわるい』と笑って相手にしてくれないこと。悪いと思わない人に対する 対応に困る」
「患者のセクハラ言動、セクハラ行為について『まさかそんなはずはない』と家族からの 理解を得られなかった」

   ソファちゃんさんも「言える範囲」だと留意したうえで、「お尻が大きい」などの執拗な声掛けをされたり、ベッドから車いすなどに乗り換えさせる際に身体に触られたりする被害に遭ったことがあると明かす。男性が被害に遭うこともあり、患者から股間を触られたり、言葉で傷つけられたりしていると述べる。

   ソファちゃんさんはイラストを通じて、「そんなこともあるのね、と思っていただければなによりです」と述べる。また胸を触れられた看護師に落ち度があるとった、第三者が被害者を責めるようなコメントを送るなどの「セカンドレイプ(二次加害)」は控えてほしいと訴えた。

    患者やその家族らが職員に対して行う暴言・脅迫、暴力、セクシャルハラスメントなどの院内暴力については、日本看護協会の公式サイトでも、職員の心身に影響を与え、安全で質の高い医療や看護提供の妨げになっていると伝えられている。

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