東京電力福島第1原発で出た処理水の海洋放出をめぐる問題で、立憲民主党執行部が苦慮する状況が続きそうだ。
石垣のりこ参院議員が2023年8月27日に福島県いわき市で行われた集会で「今日は党を代表してこちらに伺わせていただきました」と自己紹介した上で、党の見解とは異なる「汚染水」という言葉を繰り返しながら海洋放出を批判した。8月29日の記者会見で見解を問われた岡田克也幹事長は「『党を代表して』と、そういう立場で出て行ったとしたら、それは党の見解を述べてもらわないといけない」と不快感を示した。
「今日は党を代表してこちらに伺わせていただきました」
集会には共産党の小池晃書記局長や社民党の福島瑞穂党首らも出席。共産党の機関紙「しんぶん赤旗」によると、
「日本共産党、立憲民主党、社民党の3政党と地元の4労働組合の『7者共闘』による『国・東電による海洋放出反対全国行動』の集会」
だ。石垣氏は、次のようにあいさつした。
「今日は党を代表してこちらに伺わせていただきました。いろいろご心配おかけしている ところもあるかもしれませんけれども、党を代表して、および、私の個人的な宮城出身としての思いも込めて、ちょっとお話をさせていただきたいと思います」
岡田克也幹事長は7月11日の記者会見で処理水放出は「科学的には一応答えは出ている」とする一方で、風評被害を防ぐための努力が「十分だとはとても思えない」と発言。理解を得るための努力が足らないという点で政府を批判してきた。放出されるのは「処理水」だと表現。この見解は泉健太代表も繰り返しており、党の見解として定着している。
これに対して、石垣氏は「汚染水」という表現を強調して政府の対応を批判した。
「結論ありきでこのアルプスをして処理された汚染水の海洋放出を強行したことに対して断固として私も反対の声を上げたい」
「これは福島第1原発事故に由来する汚染水の処理の問題だ」
さらに次のようにも述べ、処理水放出に反対する近隣諸国に理解を示した。
「ちゃんとした説明を行わずに結論ありきで進めているこの強硬姿勢に対して『日本は一体どういう復興をやっているんだ』と疑義を生じさせ、これからの復興の足かせになっているのではないか」
「ただちに影響はない、これ、どこかで聞いたことがある言葉ですよね?」
安全性に関する党の見解についても、枝野幸男前代表の官房長官時代の発言を揶揄しながら批判した。
「安全性に関しても、これは党の見解としてはIAEA(国際原子力機関)も...ということで一応の理解を得ているというふうな見解を示しておりますが、私自身は震災後に、ただちに影響はない、これ、どこかで聞いたことがある言葉ですよね?ただちに影響はない、これ以上のことは安全性に関して申し上げることができないと、私自身が考えております」
具体的には、放出される放射性物質の総量の問題が「一切報じられていない」と主張し、処理水を薄めるのに使う海水が安全か分からないとして、放出の方法が「欺瞞」だと非難した。
石垣氏の発言について問われた岡田氏は、「科学的には安全性は立証できている」のが党の見解だと改めて説明した。
立憲の議員をめぐっては、処理水放出に反対する韓国の野党議員が開いた記者会見に阿部知子衆院議員が同席し、「慎重さを欠いた」として岡田氏から口頭で注意を受けている。ただ、岡田氏は7月18日の記者会見で、処理水に含まれるトリチウム以外にも問題が残っていると主張している学者がいることも紹介し、
「(一部の学者が主張していることを)一つの意見として政治家が個人の意見として言われることを、私たちがその口を封じるということはできない」
とも説明している。
阿部氏に対する考え方と同じかを確認された岡田氏は、 「『党を代表して』と、そういう立場で出て行ったとしたら、それは党の見解を述べてもらわないといけない」 と答えた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)