全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)の決勝戦で、酒を飲んで暴れた観客がいたことをめぐり、大会中に会場の阪神甲子園球場で酒が販売されたり持ち込まれたりすることへの疑問や批判が、インターネット上で噴出している。
コロナ禍で一時、販売や持ち込みが禁止されていたが、また復活していた。疑問や批判の声をどう受け止めるのか、主催者や球場に話を聞いた。
売店や売り子が酒を販売し、水筒などでの持ち込みもできた
2023年8月23日の決勝戦では、慶応(神奈川)が仙台育英(宮城)に勝った直後、ライト側外野席で酒に酔った若い男性が他の観客に絡むなどして暴れ、警察官数人で取り押さえる騒ぎになった。
この騒ぎについて、「甲子園決勝、観客が酒飲んで『大暴れ』 注意され逆ギレ?泣き出す女性も...警察沙汰の顛末」と題して翌24日付J-CASTニュースが報じると、ネットニュースのコメント欄などでは、そもそも観客席で酒を飲んでいたことに疑問や批判の声が上がった。
「高校生のスポーツ大会で酒を売ることに違和感覚える」
「高校野球の試合の場に持ち込むことは禁止すべきだ」
「この問題が無策ならば、高校野球の聖地は台無しです」
野球観戦ではお酒を楽しみたいとの向きもあったが、プロ野球とは違い、高校野球は「教育の場」であることを理由に異を唱える声が多かった。
会場の阪神甲子園球場の公式サイトや広報担当者の説明によると、夏の甲子園では、ビール、酎ハイ、日本酒、焼酎などの酒を売店で販売した。球場の売り子もビールなどを売り歩いた。
危険防止のため、缶やビンの持ち込みは禁止されているが、水筒やコップなどでの酒の持ち込みも可能だった。外で酒を飲んできても、入場できたという。 その一方、今回の大会では、飲酒をめぐるトラブルが続発している。
17日には、酒を飲んで観客と口論になり、駆け付けた警察官のあごを殴ったとして、無職の男(37)が公務執行妨害の現行犯で逮捕された。21日の準決勝では、泥酔して球場外の敷地でうずくまり、声をかけた警備員の腹を殴るなどしたとして、飲食店員の男(35)が暴行の現行犯で逮捕されている。
「観戦しながらの飲食も含めた様々なスタイルの楽しみにお応えする」
高校野球で酒の販売や持ち込みを認めていることについて、阪神甲子園球場の広報担当者は8月25日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように説明した。
「球場ですべて決めているわけではなく、基本的には主催者の意向です。販売や持ち込みについては、主催者が決めています。今のところ、見直しを検討するという話にはなっていません。お酒を飲む場所を区別するという話が出たこともなかったです」
夏の甲子園を主催する日本高校野球連盟(日本高野連)と朝日新聞社は28日、取材に対し、次のように共同でコメントした。
「家族連れや友人同士などで来場されるお客様の、観戦しながらの飲食も含めた様々なスタイルの楽しみにお応えするため、球場からの要望で酒類の販売を認めております。
夏の大会では、感染防止のため原則無観客とした2021年は販売を見合わせていただきましたが、22年から再開を認めました。危険防止の観点から、カン・ビン類の持ち込みは禁止としております」
酒の販売や持ち込みについて、ネット上では、教育上の観点を重視する意見が多かったが、主催者側では、観客の立場を主に考慮しているようだ。
酒の販売や持ち込みについて、他の競技では、どうなっているのだろうか。
インターハイでは、「教育活動の一環」で酒の販売はなく
7月22日から8月21日まで北海道をメインに開催されたインターハイ(全国高校総体)について、主催者の全国高校体育連盟(全国高体連)は25日、取材に対し、会場で酒が販売されたことはないと答えた。その理由として、「教育活動の一環としての部活動であり、その成果の発表の場がインターハイであるため」だと説明した。
酒の持ち込みについては、特に規定していないとしたが、「視察等において観客席での飲酒は確認したことはない。加えて、各競技実行委員会からそれについての報告もない」と答えた。今後も同様の方針でインターハイを開催していくとしている。インターハイは、読売新聞社が共催している。
なお、インターハイは、夏の甲子園とほぼ同じ時期に開催しており、競技種目に野球はない。日本高野連は、全国高体連に所属しておらず、日本学生野球協会に所属している。
野球とともに人気のあるサッカーは、インターハイの競技種目になっているほか、22年12月28日から23日1月9日に開催された全国高校サッカー選手権大会では、公式サイトによると、缶やビンのほか、酒の持ち込みも禁止された。酒に酔って入場したり、試合運営や他人の行為を阻害したりする行為も禁止されている。
国立競技場で行われた準決勝と決勝では、「会場におけるアルコールの販売は行いません。またアルコールの持ち込みも禁止します」と明記されていた。この大会は、日本サッカー協会と民間放送43社が主催し、全国高体連も共催している。
(追記:2023年8月30日11時30分)記事公開後に朝日新聞社から連絡があり、コメント部分に「球場からの要望で」を加筆しました。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)