東京電力福島第1原発で出た処理水の海洋放出をめぐるX(旧ツイッター)上のジョークに、ウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使が反応した。
「一酸化二水素」が危険だとする書き込みに「一酸化二水素は水だ」と突っ込む内容だ。コルスンスキー氏は書き込みがジョークだと理解しているが、「多くの人はそうではない」とみているためだ。
「ジョーク」の指摘に「私は理解している。だが、多くの人はそうではないだろう」
反響が広がっていたのは以下の投稿。インフルエンサーとしても知られる在日ウクライナ人評論家が2023年8月26日に投稿した。
「政府が隠そうとしてる事実。実は処理水にはDHMO(一酸化二水素)という液体が多く含まれている。人間が吸引すると死亡するだけではなく、防虫剤や殺虫剤の主成分であり、鉄を錆びつかせる程強力なもの。原発でよく使われ、2011以降、日本全国の水道水にも確認されてる。一酸化二水素で海を汚さないで!」
「DHMO」「一酸化二水素」といった表現は1980年代に米国で登場したとみられ、水をとりわけ危険な物質であるかのように表現する際のジョークとして用いられる。この書き込みは、引用されたものを含めると1万回以上拡散(リポスト)され、3万3000回以上「いいね!」がついた。
コルスンスキー氏が「一酸化二水素は水だ」と突っ込んだ書き込みには
「大使様、この人はジョークを言いました」
という声も寄せられ、真意を
「私は理解している。だが、多くの人はそうではないだろう。だから、私は彼らのために明確にした」
と書き込んだ。
「ロシアや中国が主張していることは、まったくの作為的なもの」
コルスンスキー氏は処理水の海洋放出に理解を示す立場。3月10日に東京・内幸町の日本記者クラブで開いた記者会見で、
「汚染水処理の問題は、日本は非常に適切かつ科学的に正当な方法で管理していると思う。この問題に関してロシアや中国が主張していることは、まったくの作為的なものだと思う。私自身の科学的背景を踏まえると、この水の処理計画が環境に害を与えないよう、非常に慎重に設計されていることは理解している」
と述べている。大使館のウェブサイトによると、コルスンスキー氏の専門分野は「エネルギー、貿易および投資政策、エネルギー安全保障、地域安全保障、科学技術を含む戦略的計画および開発」。応用数学で博士号も持っている。
コルスンスキー氏は会見で、原発を「重要なエネルギー源」だとして、
「たった2回の事故ですべての原発を廃炉にすることはできない。私たちは教訓を生かし、将来の事故を防がなければならない」
とも話した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)