「盗撮の被害にあわないために!!」。盗撮被害者に「自衛」を促すポスターが2023年8月、ツイッター(現・X)で話題になっている。
J-CASTニュースはポスターを所轄している京都府下京警察署に意図を尋ねた。
「あなたの後ろは大丈夫!?」
ポスターには、広げた手を突き出す女性の写真とともに「盗撮の被害にあわないために!!」と大きく書かれており、他にもこんな文言がある。
「あなたの後ろは大丈夫!?」
「盗撮は背後から行われることが多い!! エスカレーターや階段を利用するときは... ちょっと後ろを振り返る 横を向いて乗るのも効果的 カバンでスカートを押さえる」
「盗撮やチカンを目撃したら、すぐに110番通報を!!」
盗撮しようとする男性のイラストも描かれ、「ドキッ!! 隙がない!!」と吹き出しがついている。こうした内容に対し、女性に自衛を求めるものだとして疑問の声が上がった。
「盗撮は自衛できなかった被害者のせいではなく、勝手に人のスカートの中にカメラを入れてくる加害者のせいに決まってます」
「どこまで女性に自衛押し付けて男の加害性無視し続けんの?盗撮される方が悪いみたいな言い方やめろ」
「こういう自衛を求めるポスターとかで知らず知らずのうちに『被害に遭うのは隙があるから』と刷り込まれてしまうのでは?」
同じポスターは20年1月、22年10月にもツイッター上で注目を集めた。精神科医の香山リカさん(@rkayama)は20年1月26日、同日撮影したポスターの写真を添え「京都駅のポスター、エスカレーターの盗撮なんてする人が100%悪いのに、被害側の女性が横向いたりカバンでスカート押さえたりして乗らなきゃならないの、なんか違わないかな...」と投稿していた。
香山さんは23年8月22日、取材に対し、このポスターについて「被害者に『隙』があるから痴漢にあうといったメッセージは、すでに痴漢にあった経験のある人にも自責の念を与え、いわゆるセカンドレイプ的な影響があると思います」との見方を示した。
「盗撮しているところ、見られてますよ」加害者向けポスターも
なぜ盗撮の被害者に自衛を促すポスターを掲載しているのか。下京警察署は24日、取材に対し「犯罪の起きにくい社会づくりのため、この種の犯罪の手口や場所的な特徴を踏まえて注意喚起しようとしたものと思います」と意図を説明した。
ツイッター上で「盗撮犯の存在は容認するのか」など批判のコメントが寄せられていることに対しては、次のように話す。
「広報啓発の実施にあたっては、被害者や目撃者を対象とした内容に加え、痴漢や盗撮は犯罪である旨を明示するなど、加害者が痴漢・盗撮事犯を敢行することを思いとどまらせるような内容についても盛り込んでいます」
同署によると、盗撮犯に向けたポスターも2種類貼られていた。1つには、「オイ!チカン」と書かれており、市民数人が犯人をにらみ、うち1人は通報画面が表示されたスマートフォンを手にしている様子が描かれている。もう1つには「盗撮しているところ、見られてますよ」と書かれ、何本もの市民の手が盗撮犯を指差す構図となっている。
被害者に自衛を促すポスターは、16年から京都駅構内をはじめ様々な掲示板に掲出されてきたと考えられるとしたが、現在は「古いものですから順次撤去され掲出されているところはないと思われます」としている。
痴漢・盗撮撲滅のための対策については
「痴漢・盗撮犯人の徹底検挙、痴漢・盗撮犯人への警告、犯罪の特徴を踏まえた注意喚起、犯罪の起きにくい社会づくりに向けみんなで注意しよう、傍観者にならないという気運を高める啓発など様々な角度から、総合的な対策を行っており、今後も犯罪の被害防止に向け、啓発を行ってまいります」
とした。