2年前の火災から立ち直りつつある国産爪楊枝メーカー・菊水産業(大阪府河内長野市)の「転売」をめぐる騒動が大きな注目を集めた。
SNSで話題になった化粧箱入りの爪楊枝が完売した隙に、無関係な事業者が通販サイト「アマゾン」で高額な予約販売を開始した。しかし同業者らの知恵を借りて、悪質な事業者らは3日間ほどで撤退したという。
いったい何があったのか。J-CASTニュースは2023年8月23日、代表の末延秋恵(すえのぶ あきえ)さんに一連の経緯を取材した。
「自社でも在庫が無く、いつ再販できるかもわからないのに...」
菊水産業は1960年、爪楊枝生産が盛んだった大阪府河内長野市で創業した。同社によれば、現在も国内で爪楊枝の生産を行っているのは同社含めたった2社しかない。末延さんは21年、祖父たちが残した大切な会社を残したいと考え、4代目後継ぎとして代表に就任した。
しかしその1か月後に巻き込まれた火災によって、工場を除き事務所や倉庫など全ての建物を失う。復活を目指したクラウドファンディングがSNSで話題になり、メディアでも取り上げられ、問い合わせも寄せられるようになった。末延さんは多くの人に支えられたことに感謝し、SNSで応援してくれた人々に近況を発信している。
そういったエピソードの1つがX(ツイッター)で話題になったことをきっかけに、化粧箱入りの爪楊枝「きくすい 日本製 純国産しらかば楊枝 約300本入」(税込み550円)が8月20日に完売した。取材に対し末延さんは、従来であれば月に100箱ほど売れる商品で十分な在庫はあったと振り返る。
「400箱ほどあったのが、急に売り切れてしまいました。手元にあった箱と注文数を確認しながら、オンラインサイトの在庫に反映していきました。新たに化粧箱の発注をかけましたが、週末だったので納期も不明で、いつ販売を再開できるか分からない状態でした」
すべてのオンラインサイトの在庫を0に反映したはずが、20日にアマゾンで1800円で出品されていた。菊水産業が商品を販売していたページで、無関係な事業者が高額な転売を始めたのだ。すでに販売されている商品と同じページで別業者が販売できる「相乗り出品」という仕組みを用いたものだった。
「21日に見たときは予約販売に変わっていて、9月1日発売予定と告知されていました。自社でも在庫が無く、いつ再販できるかもわからないのに、おかしいと感じました」
アマゾンに問い合わせを行うも、返事を待っている間に4事業者が出品していた。