中学受験のための進学塾「四谷大塚」の20代男性講師が、インターネットで集めた小児性愛者グループのSNSに、塾生の女子児童の下半身を狙った盗撮動画と実名や住所、連絡先などの個人情報を投稿する事件が起きた。グループのSNSでは、性犯罪をけしかけるような書き込みもされている。集英社オンラインが2023年8月11日、報じた。
四谷大塚は謝罪したが、会社としての法的責任はないのか。また盗撮などができてしまう環境、個人情報を教師が容易に見られる環境にしていたことに法的責任はないのか。J-CASTニュースは、弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士に詳しい話を聞いた。
雇用していた法的責任は?
四谷大塚は13日、公式サイトで「教育に携わる者として、あるまじき許されざる行為であり、被害者生徒様ならびにそのご家族様をはじめ、関係者の皆様に多大な心配とご迷惑をおかけしましたことを、当該社員を雇用してきた使用者としての責任を重く受け止め、心より深くお詫び申し上げます」と謝罪した。問題の社員を「懲戒解雇」処分とし、警察へ通報。捜査が進んでいるとした。
四谷大塚には、雇用していた法的な責任がないのだろうか。17日、取材に応じた正木弁護士は次のように見解を示す。
「今回、結果的に四谷大塚は犯罪者を雇用していたことになる可能性が高く、その道義的責任は世間から追及されるでしょう。しかし、このような人を雇用していたということについて、四谷大塚が何か法的な責任を負うことはありません」
雇用契約は、対価を払って人を労働させる契約で、誰でも自由に結ぶことができ、雇うこと自体に違法性がないと説明する。
しかし、雇用していた社員が業務に関係して一連の行為をしているため、犯罪に当たる行為に関し、四谷大塚は民法上の損害賠償責任(民法715条1項)を負う可能性があるという。
四谷大塚は教室に監視カメラをつける、生徒と教師を二人きりにさせない、個人情報は一講師が見られないようにするなど性加害を生まない環境を作ることもできたのではないか、という意見がツイッター(現・X)にあがっている。四谷大塚が、性加害ができてしまう環境にしていたことに法的責任はないのか。正木弁護士は次のように説明する。
「四谷大塚が監視カメラを設置していなかったなどといったことが、性加害を促進させる環境を作っていたとは言えないと思います。もちろん、四谷大塚の塾内の環境整備が甘かったことがこの事件と無関係とは言えませんが、やはりこれについて何か法的な責任を問うことは難しいでしょう」
四谷大塚は加入していないが、全国学習塾協会は自主基準やガイドラインを設け、業務日報・映像・教室巡回等の方法で講師を監督するように定めているとして、「業界団体に未加入ということは問題がありませんが、塾内の環境整備が本当に十分であったのかについてはやはり疑問があります」と指摘した。