たこ焼きはどこまで大きく作れる? 京大物理学者らガチ考察...「賢さの無駄遣いたまらん」論文話題、その内容は

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   たこ焼きはどこまで大きく作ることができるのか――。物理学者たちの研究成果を伝える論文がSNSで話題になっている。京都大学大学院理学研究科の橋本幸士教授と、理工系YouTubeチャンネル「ラムダ技術部」が共同で手掛けた。

   J-CASTニュースは2023年8月16日、たこ焼き半径の上限に関する理論を提唱した橋本教授に、論文を公開した背景を取材した。

  • SNSで話題になった「たこ焼き半径の上限」に関する論文
    SNSで話題になった「たこ焼き半径の上限」に関する論文
  • 日常で生まれた疑問を物理の視点で考える書籍「物理学者のすごい思考法」(集英社インターナショナル)
    日常で生まれた疑問を物理の視点で考える書籍「物理学者のすごい思考法」(集英社インターナショナル)
  • SNSで話題になった「たこ焼き半径の上限」に関する論文
  • 日常で生まれた疑問を物理の視点で考える書籍「物理学者のすごい思考法」(集英社インターナショナル)

「たこ焼き関数という新しい概念」

   あるX(旧ツイッター)ユーザーが8月8日、「こういう賢さの無駄遣いたまらない」などと紹介したことで話題になった。投稿は4500件のリポスト、1万1000件の「いいね」が寄せられるなど大きな反響があった。

「たこやき関数とかいうわけわからんもの作っちゃう天才好き」
「著者、京大理論物理というガチ中のガチの人だった」
「こういう論文好き ちゃんと理論と実験を交えて検証を行なってるところや、たこ焼き関数という新しい概念が出てきたりする」

   橋本教授が、たこ焼きの大きさに興味を持ったきっかけは2014年のブログに記されている。この年の3月に新しく購入したたこ焼き機の端の電熱が弱かったため、24個を同時に焼けるはずが16個しかできなかった。このたこ焼き機で「如何に早くたこ焼きを焼くか」ばかり考えていた橋本教授は、妻の「このたこ焼き機めんどくさい、もっと大きいたこ焼きをなんで焼かへんのやろか」という言葉から新たな視点を得た。

「この『たこ焼きの半径に何故上限が存在するのか』という問いに、『そりゃ口に一口で入るサイズやからやろ』と答えるのは簡単である.そう答える前に、ちょっと待て.物理的な理由が存在するのではないか.そう考えるのが物理学者の正しい姿であろう.私は頭を巡らせた.何故この世には、半径2センチメートル以上のたこ焼きが存在しないのであろうか、と」

   橋本教授は「誰もが認めることであろう」と自信を持ちながら、たこ焼きの本質について、固めの表面を噛み砕くと、熱くてジューシーかつトロっとした食感が得られることなどと定める。この中身がトロっとした食感を維持したまま、どこまで大きくできるか考えた。

人気YouTuberが橋本教授の理論を検証すると...

   橋本教授は21年2月、日常で生まれた疑問を物理の視点で考える書籍「物理学者のすごい思考法」を集英社インターナショナルから発売した。その中で、たこ焼き半径の上限に関する理論にも触れている。詳細は書籍に記されているが、橋本教授は「たこ焼きをその形状が安定なまま巨大化させるためには扁平にしないといけない」と予測を立てた。

   取材に対し橋本教授は、集英社インターナショナルからこの書籍の販促企画として、人気YouTubeチャンネル「ラムダ技術部」とのコラボが持ち掛けられたと明かす。公開された動画によれば、ラムダ技術部では次のように橋本さんの予測を検証している。

   まず普通の円形のたこ焼きを大きくできるか挑戦する。出来上がった半径4.25センチのたこ焼きを割ってみると、中身がしっかりと固まってしまいトロトロ具合が少なかった。火加減を調整して柔らかめのたこ焼きを作るも、自重を支えきれずどんどん変形してしまう。これは橋本教授の考える「たこ焼き」の本質にそぐわない。

   そこで橋本教授が提唱した理論を検証する。球体のたこ焼きを、形が維持できる状態で巨大化すると、表面のカリッとした部分が厚くなり、先述のようなたこ焼きらしからぬ食感になる。しかし扁平にすれば、たこ焼き全体の厚みが薄くなり、中のトロトロ具合も残せるのではないかという。

   ラムダ技術部を運営する入江一帆さんがホットプレートで扁平なたこ焼きを作ると、安定感があり中身もトロトロなたこ焼きができたという。出来上がったたこ焼きのビジュアルについて、橋本教授は思わずこう漏らす。

「これはお好み焼きやねぇ...」

   入江さんは「たこ焼きを球のまま巨大化すると食感か形状を犠牲にしなければならない」「扁平な形状であれば巨大なたこ焼きを焼くことができる」と結論付ける。橋本さんが再び「うーん、お好み焼きやね!」と笑顔でツッコミを入れて、検証は締めくくられた。

   SNSで話題になったのは、この検証動画を踏まえて執筆された論文だった。

橋本教授に聞く、今後の展望

   取材に対し橋本教授は、「ラムダ技術部さんの実験が素晴らしい」と感じたと振り返る。その勢いに任せて論文も執筆した。

「論文を書きたくなり、結局思うままに書いてしまって、それをネット公開しちゃえというノリが、物理学徒のお茶部屋でのダベリのノリで、大変楽しかったです」

   論文は「オイラー・ラグランジュ形式」という方程式で、たこ焼きの形状を安定化させながら大きくする方法を考察する。

「この形式は、拘束条件下の運動を解く際の標準的な物理学の手法です。今回の場合、たこ焼きの面積や体積に関して拘束条件を用いる必要があるので、使用しました。物理学徒なら誰でもこの方法を用いると思います」

   これらの内容は論文形式にはまとめられているが、査読付きの科学雑誌には投稿していない。論文の最後に今後の課題を示し、読者らによる発展を希望している。

「このような、パロディとも言えるようなトピックの研究を通じて、物理学の研究の手法が世の中に知られることは、基礎科学の社会的な立場からすると、大変大事なことであると思います。
また、たこ焼きの形を研究することと、宇宙の形を研究することが、実は繋がっているということも感じてもらえるのではないでしょうか」
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