「やっぱり、家族っていいね」をキャッチコピーに、こども家庭庁が開催する写真コンクールが物議を醸している。SNSで「両親や家族がいないこどもに対して全く配慮がなさすぎ」「価値観押しつけになりそう」などと批判の声が広がった。
J-CASTニュースは2023年8月18日、こども家庭庁に開催の趣旨を取材した。
「家族のあり方をコンクールで評価すること自体疑問」
話題になったのは「こどもまんなか『家族の日』写真コンクール」で、8月1日から9月4日にかけて「子育てを支える家族や地域の大切さ」に関する写真を募集している。プレスリリースによれば、「安心して子供を産み育てることができる社会づくりの機運を高めること」を目的としている。内閣府が2007年に11月第3日曜日を「家族の日」と定めて以降、同様の取り組みが続けられている。
こども家庭庁がX(旧ツイッター)で、コンクールの開催を知らせたことをきっかけに疑問の声が噴出した。
「支援が必要な子どもたちは、『家族仲が円満であることが正であり当然である』という価値観に散々傷つけられてきてることも多いと思うけどなぁ」
「いかに政策担当者や政治家がステレオタイプでしか『家庭』を見ることができないかをよく示している」
「多様性のこの時代にあまりに前時代的で、あまりに暢気で、本当に呆れ返る」
現役国会議員からも批判的な意見が寄せられている。山田太郎参院議員(自民党)は「家族のあり方をコンクールで評価すること自体疑問」などと述べ、小沢一郎衆院議員(立憲民主党)も「こんなことで人口減少が止まる訳がない」などと苦言を呈している。
コンクールは、「子育てを支える家族や地域の大切さに関する『写真』を全国から募集し、優秀な作品について表彰」する。何をもって優秀と評価するのか。またSNS上の批判をどのように受け止めているのか。こども家庭庁は、取材に対しこう答える。
「本写真コンクールは、平成22年より内閣府にて『家族・地域のきずな』作品コンクールとして開始されたものです。 本コンクールにおいては、写真を見た人の心が温まるような写真を、審査員に審査いただき、表彰しているところです」
「見た人の心が温まるような写真」を表彰
当初は、入賞作品を応募者の居住地や実名とともに公式サイトに掲載すると告知していたが、SNSでは被写体のプライバシーに関する懸念が噴出した。こうした声を受け9日、応募名を匿名やアカウント名にすることを認め、個人が特定されないよう加工できるようにするなど訂正していた。
コンクールを通じて、目的である「安心して子供を産み育てることができる社会づくりの機運を高める」ことはできるのか。こども家庭庁は次の見解を示す。
「本コンクールを通じ、見た人の心が温まるような写真を皆さんに共有することにより、安心してこどもを産み育てることができる社会づくりに向けた機運醸成につながればと考えております」
コンクールという形式については、「これまでの実施を重ねて一定程度定着してきた」として、本年度もこれを踏襲する形で実施したという。
SNSでは一部で「子供がいる楽しそうな家庭の写真を集めるコンクールの何が悪いんだ?」「『幸せな家族』にいろんな形がある、を写真に残すだけよ」「すごくいいテーマじゃないですか。私は賛成です」などと肯定的な声もある。
SNSで広がった、どこにも居場所がないと感じている子どもや人間関係にトラブルを抱えている子どもたちに配慮がないといった批判については、「ご指摘のお声については、真摯に受けとめております」と受け止める。
「困難を抱えたり生きづらさを感じているこども・若者への支援は従前より取り組んできたところであり、こうした困難を抱える方が必要な支援を受けられるよう、取組をしっかり前へ進めてまいりたいと考えています」