DJ SODAさんに「露出する方が悪い」...二次加害はなぜ起きるのか 識者は「レイプ神話」蔓延に警鐘

   韓国出身の人気女性DJ、DJ SODAさんが大阪で行われた音楽フェスでセクハラ被害を受けた問題で、ツイッター(現・X)では本人に対し「露出する方が悪い」「観客に近づくべきではなかった」といった旨の二次加害(セカンドレイプ)をするコメントが多く寄せられている。

   いったいなぜ、落ち度のない性犯罪の被害者を責めるのだろうか。J-CASTニュースは、性犯罪被害者への第三者の非難など犯罪心理学を研究している駿河台大心理学部の小俣謙二教授に聞いた。

  • DJ SODAさんのインスタグラムより(@deejaysoda/一部加工)
    DJ SODAさんのインスタグラムより(@deejaysoda/一部加工)
  • DJ SODAさんのインスタグラムより(@deejaysoda/一部加工)

露出度が高いのが「悪」なのか?

   音楽フェス「MUSIC CIRCUS'23」に出演したDJ SODAさんは2023年8月14日、「私が公演の最後の部分でいつものようにファンの方々に近づいた時、数人が突然私の胸を触ってくるというセクハラを受けました」「公演中にこんなことをされたことは人生で初めてです」などとSNSで被害を訴えた。

   添付された画像には、観客がDJ SODAさんの胸に手や腕を押し付ける様子や、腕や胸を掴む観客の手が写っている。

   セクハラ問題を受け、音楽フェスの主催団体も15日、「このような行為は性暴力、性犯罪であり、断じて許すわけにはいきません」と発表。「卑劣な犯罪行為を行った犯人を特定し、損害賠償請求や刑事告訴など、民事及び刑事の法的措置を取る所存です」と今後の方針を示した。

   過去の公演中にDJ SODAさんがセクハラ被害に遭っていたかのようにみえる動画が拡散し、「他の国では結構触られている」といった憶測が広がった。DJ SODAさんは、これを強く否定している。動画の問題に加えて、SNSでは、露出度が高い衣装を着ていたDJ SODAさんを非難するような書き込みが相次いだ。

   性犯罪被害者への心ない批判の背景には何があるのか。17日、取材に答えた小俣教授によると、社会においてその性別にふさわしいとされる「伝統的性役割観」を強く持っている人が、性犯罪にあった被害者の女性を責める傾向にあるという。

   伝統的性役割観は、女性は優しく、慎ましやかで、男に従順であるという考え方だ。「二次加害をしているのは、統計的に男性の方が多く、明らかに有意差があります」と小俣教授は説明する。

「『レイプ(強姦)神話』という言葉があります。色々な内容があるので全てが関連するわけではないのですが、非難に関する問題としては、女性の性に対する考え方に歪んだ認知をしているという人たちに強いです」

   レイプ神話とは、レイプの加害者や被害者、性的暴行に対して持たれる偏見や誤った信念だ。

「例えば、露出度の高い服を着ていたら何をされてもオッケーだと思われる。あるいは、露出度の高い服を着て男性の部屋に行けば、そういう関係を持つことを受け入れていると思われる。何の保証にもならないのですが、そうした誤解を持つ人たちはすごく多いです」
「従順であれということは、男の言うこと、男の要求に従うのが普通だと考えるので、レイプのような行為も平気で行えるということになります」

「どんな服装をしていようが、何をしてもいいと考えてはいけません」

   小俣教授は、女性のあり方に対して誤った認識を持っていることと女性の性に関する態度や振る舞いがこうあるべきだという伝統的な性役割観は、強く関係していると話す。

「今回の事件は、露出度の高い服装をしているDJ SODAさんに責任があり、そういう人は何をされても受け入れるべきだという風に言われています。服装は関係ありません。認知の歪みが引き起こしたことだと思います」

   小俣教授は、伝統的性役割観は正しいか誤っているか判断できる問題ではなく、一つの考え方だと述べる。

「ただそれが歪んだ認識に繋がりやすいということを我々は自覚しないといけません」

   小俣教授は、昨今、性的な加害に関して、社会の見方が変わってきていると指摘する。

   不同意性向等罪成立を例に挙げ「嫌なものは嫌だと言ったらやめろということです。相手が同意しないのにそんなことするのはいけないということですから。そういう考え方が広く受け入れられるようになってきたのは大きな前進です。ただ、相変わらず根深い問題だとは思いますけどね」という。

   相手の自由意志をいかに尊重するかという考え方を広めることが重要だと強調する。

「大事なのは同意です。どんな服装をしていようが、何をしてもいいと考えてはいけません」

   何百年と続く男尊女卑の考えはまだ残っているため、性犯罪被害に関しては、性的自由の尊重を伝える報道などで認知の歪みを正していくしかないという。

「急激な変化は難しいと思いますが、少しずつ変えていくのが大事だと思います」
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