日本大学アメリカンフットボール部の部員が違法薬物所持の疑いで逮捕された事件に関し、同部は2023年8月5日に無期限活動停止処分となったが、5日後の10日に停止処分を解除したと同大学公式サイトで発表された。一方で、2020年に部員が薬物所持により逮捕され無期限活動停止となった同大学ラグビー部は活動再開までに約2か月かかっている。それまでにどのような経緯があったのか。J-CASTニュースは11日、同大学ラグビー部に取材した。
ラグビー部は調査を経て活動再開
日本大学ラグビー部は20年1月20日に、部員が法令違反により逮捕されたことを受け、同部を無期限活動停止にすると公式サイトで発表。同日、部員の1人が大麻取締法違反(所持)の疑いで逮捕されたと報じられた。
同部はその後、3月11日から個人練習の範囲で活動再開。5月に対外試合含め活動を再開している。同部によると、1月23日にラグビー部監査役、元警察官、弁護士(当時は氏名公表)からなる特別調査委員会を設置し、26日に監督・コーチ含む全部員に対してヒアリング調査をしたとして、次の通り結果を説明した。
「ヒアリング対象者について、各自の薬物使用の有無を初めとし、元部員(編集部注:逮捕された部員)の部内での様子、交遊関係、日常生活についての調査を実施した。その結果、元部員がチーム内において、全体行動時間外においては特に親しくしている者がいなかったこと、大学の学部授業等への出席率も芳しくなく、元部員は練習がオフの日は、当部部員以外の者と遊びに行っている事が常態化していたとの結果が得られた。
これらの結果が、本件について周囲に発覚しなかった理由になると同時に、元部員から当部内の他の部員に対する広がりが生じている可能性が乏しいと考えられる根拠の1つであるとの結果が報告される」
この調査結果と、部員の逮捕された場所が渋谷の路上であり、他の部員がいなかったことから、「部の組織的関与は認められなかったことが報告された」という。そこで、「無期限の活動停止を決めたラグビー部長が、学生たちは仲間として彼の言動を気付けなかったこと等について反省をしてきたこと。再発防止に向けて、ラグビー部内の体制整備ができあがったことを受けて、個人の範囲での活動を認めた」とした。再発防止のための体制としては、「インテグリティマネージャーを設置。いち早く動きをチェックする体制整備」をしたとし、その後「同職宛てに相談なども届いた」という。
アメフト部は「調査委員会等の設置を検討」
大学公式サイトによると、アメフト部は「部員1名による薬物単純所持という個人犯罪であり、個人の問題を部全体に連帯責任として負わせることは、競技に真剣に取り組んできた多くの学生の努力を無に帰することになり、学生の成長を第一に願う教育機関として最善の措置ではないと判断したため」とし、8月10日に無期限活動停止処分を解除されている。違法薬物への部内の組織的関与などの調査について、日本大学広報部は取材に「原因究明に関する調査委員会等の設置を検討しています」とコメント。取材に応じた8月15日時点では、調査委員会などの設置はされていないようだ。
関東学生アメリカンフットボール連盟の公式サイトによると、日本大学アメフト部は9月2日に開幕する1部リーグTOP8のリーグ戦に参加したいという意思を連盟に伝えたが、連盟は同部に対し「当面の間の出場資格の停止」を決めた。理由として連盟は(1)日大アメフト部側から、逮捕された部員以外の部関係者全員が違法薬物に潔白であると保証できない旨が示されたこと(2)逮捕された部員以外の部の関係者に違法薬物を使用した者が存在している疑いが払拭できないこと(3)再発防止策の提示ならびにその実施がなされていないこと(4)部関係者(指導者、学生を含む)の責任の所在が明らかでないこと――の4点を挙げている。
また8月15日には、文部科学省が同大学に対し、組織内での情報伝達や警察への連絡などの判断が適切だったかを早急に検証するよう指導したと報じられている。