韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は2023年8月15日、日本による朝鮮半島統治からの解放を祝う「光復節」式典の演説で、日韓米が安全保障で協力していくことの重要性を強調した。
朝鮮戦争で北朝鮮と戦った国連軍が日本に後方司令部を置き、日本は在日米軍施設・区域のうち7カ所を国連軍に提供している。尹氏はこの点に触れて、7か所の拠点が「北朝鮮の南侵を遮断する最大の抑止要因」だと述べた。韓国メディアは、圧倒的な軍事力を誇示することで「北朝鮮の挑発意欲をそぐ意図」があるとみている。
日本は「私たちと普遍的な価値を共有し、共同の利益を追求するパートナー」
尹氏が光復節に大統領として演説するのは2回目。22年の演説では、日本を
「世界市民の自由を脅かす挑戦に対抗し、共に力を合わせていかなければならない隣人」
と表現し、
「日韓関係が普遍的価値に基づいて両国の未来と時代的使命に向かって進むとき、過去の問題もきちんと解決することができるだろう」
と述べていた。
その後、元徴用工問題の進展などで日韓関係は改善。23年の演説では日本は
「私たちと普遍的な価値を共有し、共同の利益を追求するパートナー」
に格上げされ、日韓両国は
「安全保障と経済の協力パートナーとして未来志向的で協力・交流しながら、世界の平和と繁栄に共に貢献できる」
とした。直後に日韓米の安保協力の重要性に言及。とりわけ強調したのが、北朝鮮の核・ミサイルの脅威だ。
「北朝鮮の核・ミサイルの脅威を根元から遮断するには、韓米日3国間の緊密な偵察資産協力と北朝鮮の核・ミサイル情報のリアルタイム共有を行わなければならない。日本が国連司令部に提供する7か所の後方基地の役割は北朝鮮の南侵を遮断する最大の抑止要因だ。北朝鮮が南侵する場合、国連軍司令部が自動的かつ即時に介入して報復することになっており、日本の国連軍後方基地は、それに必要な国連軍の陸海空戦力が十分に備蓄されている場所だ」
1957年まで国連軍司令部は東京に置かれていた
外務省ウェブサイトによると、7か所は、キャンプ座間、横須賀海軍施設、佐世保海軍施設、横田飛行場、嘉手納飛行場、普天間飛行場、ホワイトビーチ地区。国連軍地位協定に基づいて、日本が国連軍に提供することになっている。
国連軍は1950年6月25日に朝鮮戦争が勃発したことを受けて、同7月に創設。司令部は東京に置かれた。53年7月の休戦協定成立を経て57年7月に司令部がソウルに移り、日本には「後方司令部」が置かれた。当初はキャンプ座間に置かれたが、2007年11月に横田飛行場に移転した。
尹氏の演説では、国連軍司令部を「『一つの旗の下』で大韓民国の自由をしっかり守るために核心的な役割を果たしてきた国際連帯の模範」だと表現。米キャンプデービッドで8月18日(米東部時間)に予定されている日米韓首脳会談が
「朝鮮半島とインド太平洋地域の平和と繁栄に貢献する3か国協力の新しいマイルストーンになる」
とした。
聯合ニュースは、尹氏が後方基地に言及した背景を
「北朝鮮の核・ミサイルの脅威が日増しに高まる中、韓国と同盟国の圧倒的な軍事力を強調し、北朝鮮の挑発意欲をそぐ意図と解釈される」
とみる。尹氏が8月10日に国連軍司令官らを大統領府に招いて
「国連軍は朝鮮半島に戦争が勃発した場合、即座に韓国の友好軍戦力を統合して米韓連合司令部に提供するなど、韓国を防衛する強力な力だ」
などと強調したエピソードも紹介し、
「後方基地がある日本が北朝鮮の侵略を抑制する安全保障協力パートナーであることを強調しようとする側面もあるようだ」
と指摘した。
中央日報は、
「北朝鮮の核・ミサイルの脅威が高まり、それに伴う朝鮮半島の安全保障不安が深刻化する中、戦争勃発など最悪の事態を防ぐためには、国連軍を仲介とした日本との協力が不可欠という意味と解釈される」
と報じている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)
Today we commemorate National Liberation Day of Korea, marking the liberation of the Korean people from colonial rule. We recognize the significance of independence and remember the sacrifices made. Click here for President Yoon’s Remark: https://t.co/LzDNBFA6aN
— Korean Embassy DC (@RokEmbDC) August 15, 2023