親は「親ガチャ」とどう向き合うべきか
しかし、子育て世代には親ガチャが「呪いのコトバ」となり、プレッシャーになっている実相もある。この点についてはどうか。
「子どもは親を非難したり、親に責任を押し付けようとしたりして使っているわけではないので、『親ガチャ外れた』と言われたら、『こっちこそ子ガチャに外れた』と言い返すくらいで良い。こうした親子で衝突をした経験が今は少なくなっている。親子の関係が『カプセル』になってきていて、共感しあえるような、一体化した親子関係になってきている。子どもとぶつかることをとても恐れている。実は衝突をしないと、親も救われないですが、子どもも救われない」
「子どもは基本的に親から承認されたいと思っています。これは友人関係にも当てはまります。承認されたい時には、同じような価値観や思いに共感しているから承認してもらえると一般的には考える。例えば『イツメン』と言われる同じような価値観、生活スタイル、生活レベルの人で固まって人間関係を作る。それはその方が承認を得やすいと思っているからです。しかし、この承認はいわば条件付きの承認です。共感しているから承認してもらえているのです。共感が得られなければ、承認は得られないと思うわけです。だからどこまでいっても不安なのです。よって、共感を得ようと同調圧力が高まっていきます」
一方、安定していて安心できる「無条件の承認」とは、例えば「共感できない。価値観も違う。意見が衝突する。喧嘩してしまった。それでも『お前の存在は認めるよ』と言われる」場合や、「親子喧嘩して『もうお前なんか親じゃない』『お前なんか出ていけ、うちの子じゃない』と言い合いになったにも関わらず、ちゃんと夕飯が出てくる」場合だという。
土井氏は「これを今の若い人は体験していないんです。30代くらいまでの親の世代もそうです。親の世代も他人とぶつかるのは嫌だし、親子仲が良かったため第二次反抗期を経ていない人も多く、ぶつかった経験があまりないとの指摘もしばしばあります」と考察する。