呪いのコトバ化した親ガチャ...背景に「家族主義」の呪縛 識者「親の負担大きすぎる」と警鐘

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市民権得た3つの理由

   土井氏によれば、親ガチャが市民権を得た理由は(1)相対的貧困率の上昇、固定化(2)ある種の諦観の広まり(3)コミュニケーションツールとしての有用さ――の3つがある。

   相対的貧困率は、貧困線という基準を下回る所得で生活している人の割合を指す。厚生労働省の国民生活基礎調査では、2021年は15.4%(貧困線は127万円)と、06年以降15.0%以上を常に記録している。17歳以下に限定した「子どもの貧困率」は11.5%、ひとり親世帯では44.5%にも上る。経済的に苦しむ家庭は珍しくなくなり、親ガチャは世相を如実に切り取った。

   過酷な現実を前に、「自分の人生において、明るい未来を描けないのはもうしょうがない」と諦めの境地となる。

「こうした時に、今の特に若年層はどこに自分の拠り所を求めるかというと『生まれ』です。社会的に身につけたものは評価がどんどん変わってしまいますが、生まれ持ったものは不変・不動で、そこに基盤を求めたいという感覚が強まっている。例えば地域志向が強まっているとか、家族関係が一般的には良くなってきているとか」(土井氏)

   宿命論的な人生観は昔からあったようにも思えるが、今世紀から支持を高めたという。土井氏は、2000年以降の日本の一人当たりGDP(国内総生産)や実質賃金、消費者物価指数の低迷を挙げ、こうした社会情勢を「平坦(フラット)化」と表現する。

   「未来は今よりも違うところにあり、明るい未来が描けると90年代までは思えた。2000年代に入るとそうはいかない。未来は現在の延長線上にあるもの。つまり、未来が外部性を失ったのです。そこに期待をかけることが難しくなってきた」と話す。

「近代以前の中世の社会は平坦な世界でした。その時には生まれ(身分)によって人生が決まっていたわけです。ガチャの世界ですよね。その後、私たちは近代を迎えて自分が獲得したものによって自分の人生は決められるという意識が強まった。しかし、日本では 2000年代に入ってから再びフラットになってきた。中世のような社会がもう一度訪れてきているわけです」

   (3)の「コミュニケーションツールとしての有用さ」とは、親ガチャが意思疎通のコストを減らすのに役立つ、との指摘だ。

「今は価値観も多様化し変動もしているので、他者とコミュニケーションを取るのが難しいです。みんなが同じ土俵に立っているわけじゃないからです。自分の家庭環境などを友人に話すのは大変なんですよね。例えば『朝食べる物がなかった』といったことは言えないのですよ。それは『恥ずかしい』、というよりも、『相手に精神的な負担をかけたらまずい』と思っているわけです」
「相手に引かれてしまうかもしれない。そういう時に『親ガチャ外れちゃってさ』という言い方をすると、オブラートに包んで話ができるので、相手の精神的な負担を下げるコミュニケーションツールとして使われている。使いやすかったという面もある」
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