「娘にとって私は外れなのかな」「プレッシャーでしかないです...」 若者言葉「親ガチャ」に苦しむ子育て世代

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「親の経済状況にまで発展しちゃってて、それは違うんじゃないか」

   父はどうだったのか。ミホさんは「男尊女卑みたいなところがあって。母の育児とか家事に口を出すもんじゃないと思ってるんですよ」と振り返る。当時都内に務めていた父が中部地方の家に帰宅するのは、月に1、2回程度だった。

   都内の大学に進学することに反対していた母と違い、父は許してくれたが、「積極的に子どもを保護したりせず、母が苛立っているときに私を責めたりすることもありました」と語る。大学に進学するタイミングで父は癌で亡くなったという。

   大学に進学したミホさんは、体調を崩して中退することになる。その後はフリーターとして仕事を転々としながら、病院に通いつつ1人暮らしを続けた。そこで出会ったのが現在の夫だ。結婚後もパートの仕事を続け、3年前に今の保険関係の仕事に就いた。

   「虐待の連鎖」を信じるミホさんは、親ガチャについて次のように述べる。

「私は『虐待する親』がそうじゃないかという認識です。親に恵まれなかった子どもは外れで、そもそも愛してくれる親はみんな大当たりなんです、私からすれば。私は子どもを愛せるか分からないから、私が親だったら外れじゃないですか」

   現在も親からの虐待がフラッシュバックするミホさん。友人が子どもに可愛い服を着せたり、子どもを抱きしめてあげたり、手をつないだりしたという話を聞いたとき、「私はそれをしてもらったことがなかったな」と感じるという。

   ミホさんは「私が持っていないものを子どもに与えなきゃいけないということは絶対に辛くなると思うんです」とし、夫と結婚する時に子どもを持たないことを2人で決めた。

「親ガチャは虐待を受けたコミュニティで発生した言葉だと思っていて、親ガチャはあると思っています。実際にあるなって身に染みているので。でも今は、親の経済状況にまで発展しちゃってて、それは違うんじゃないかなと思うんですよ」

   例えば親の収入に関して「親ガチャ失敗した」という投稿を見たとき、心苦しく感じるという。「私的には、親で辛い思いをした人に出会ったときに、『親ガチャ失敗しちゃうこともあるよね』という慰めとか共感に使ってるだけで、今の広がり方はおかしいとずっと思ってました」と心境を明かした。

   現在の休職には、母から受けた完璧主義という教育が影響している。ミスをすると口を聞いてもらえず手が飛んでくることもあった。ミホさんは「失敗が怖くて、大きな責任を任せられることも怖い」と話す。仕事をストレスに感じていなくても、急にご飯が食べられなくなり、吐き気が続いた。

   虐待の影響で今も苦しむミホさん。しかし、そんな母との関係が変わりつつある。かつては体調を崩すと「何やってんの、馬鹿じゃないの」と辛辣な言葉を浴びせてきた母だったが、今は「大丈夫なの?しっかり休みなさい」と電話で心配される。

「母との縁を切りたくて頑張ってたんですけど、母は縁を切られることが無理みたいで、色んな手で接触してくる人で。あと母も年を取って丸くなって...」

   母の変わり様に「人ってこんなに変わるんだ」と驚きを隠せなかった。現在は「多少警戒しつつも、数か月に1回ぐらい電話するぐらいなんですけど...。今度は母が弟の近況を愚痴交じりで言ってくる」という関係にあるという。

   そんな母について、ミホさんは「全面的に、すごい仲良い普通の親子みたいになれるといったら無理なんですけど。母の気持ちも分かるし、母が今変わってきてもいるので。まぁ連絡取ったりするなら...って感じですね。難しいですね、親子ってね」と語った。

   【予告】連載の後編は、親ガチャ事情に詳しい筑波大の土井隆義教授(社会学)に、子育て世代が親ガチャに苦しむ理由を尋ねました。8月13日10時の公開を予定しています。

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