「親ガチャという言葉はプレッシャーでしかない」
金銭的に余裕のない家庭に生まれた娘にとって、私は親ガチャ外れなのかな――。そんな思いを打ち明けるのは、西日本在住で専業主婦のミサキさん(仮名・30代)だ。同い年の夫と0歳の娘の家族3人で暮らしている。
地元の国立大を卒業したミサキさんは、地元の零細企業に就職。婚活パーティーで知り合った夫と30歳のときに結婚した。当時の世帯年収は約600万円だったが、ミサキさんは出産を機に会社を退職せざるを得なかったため、現在は約300万円で暮らす。
"子どもを持つべきかどうか"を悩んでいたミサキさんは、当時の不安を次のように振り返った。
「出産や子育てにかかる費用、日々の生活費など、今の収入ではお金が足りないのではないかという不安がありました。何とかやりくりするしかないですが、みんなが持っているおもちゃを買ってあげられない、旅行に行けないなど娘に悲しい思いをさせてしまうのではないかという不安もありました」
現在も家庭の状況について不安や悩みを抱えている。1LDKの賃貸物件に3人で住むには狭く感じるものの引っ越しする費用がない。育児の難易度が高くて全く思うようにいかない。求職活動をしているが、0歳の娘がいる自分を雇う会社はあるのか。
娘にとって親ガチャ失敗なのではないかと思う理由について、ミサキさんは「まず私が親になるほど成長できていなかったように思います」と吐露する。
「産後うつになってしまい母に手伝ってもらってばかりで、娘と2人の時は一緒に号泣したり、何も分からない娘にイライラしたり怒ってしまったりと、心にほとんど余裕がないです」
経済的にも全く余裕がないというミサキさん。「これから先、娘がやりたいことや欲しいものを叶えてあげられないことも多いのかな」と懸念もある。
妊娠前に親ガチャという言葉を知った時は「上手いこと言うな」と感じた。子どもが行きたい学校に通えない、就きたい仕事に就職できないといったことは家庭環境の影響で十分あり得ると共感を示しつつも、次のように語った。
「年収が低いことを『努力不足』と言われることも多いように感じますが、努力だけではどうにもならないこともあると思います(私の場合はたしかに努力不足なのかもしれませんが)。実際親になってみたら親ガチャという言葉はプレッシャーでしかないです...」
育児と仕事の両立でまた産後うつのような状態になるのではないか、働いても給料が上がらない、理想の母親像と自分がかけ離れている――そんな不安を抱えながらも、ミサキさんは今の状況をどうにか解決に向かわせたいと述べる。
「出来ることなら娘の近くで成長を見守りたいですが、現状を改善するには泣く泣く保育園に預けて働くしかないと思っています」