富士山に雨の中、ビニール合羽姿で登ろうとした人たちがいたとして、環境省などが運営する富士登山オフィシャルサイトの公式ツイッター(現X)が、危険だと注意を呼びかけている。
五合目のインフォメーションセンターのスタッフが、合羽姿の男性らを説得する様子の写真も投稿された。どんな危険があるのか、環境省の担当者に詳しく聞いた。
低体温症患者が続出し、八合目の救護所も受け入れできず
山梨県の吉田ルートにある県富士山五合目インフォメーションセンターの建物前で、女性スタッフがビニールの雨合羽を上下に着た男性2人に何か説明している。その奥では、別の男性スタッフが同じ装いの女性2人に向き合っていた。
この写真は、2023年8月9日夕に公式ツイッターで投稿された。
投稿では、「五合目はかなりの雨ですが、この時間から登ろうとする人がちらほらいます。そういう登山者ほど装備が、、、」と切り出し、スタッフが危険性を伝えたとしたうえで、「富士山でこんなビニール合羽、絶対NGです!富士山ナメたらいけません!」と訴えた。
投稿は、2万件以上の「いいね」が押されており、写真が拡散されて大きな話題になっている。
公式ツイッターによると、9日は、富士山で天候の悪化が予測され、前日には雷注意報が出ていた。当日は、麓からも雷鳴が聞こえていたという。富士山関連の他のツイッターでも、山頂は朝9時で気温が8度しかなく、平均で14メートルもの風が吹いていたとし、霧が出て視界が悪いとの報告もあり、公式ツイッターがリツイートしていた。
実際、八合目の救護所からは同日夕、低体温症患者が続出して受け入れできないと環境省などに連絡が入ったという。1日には、真夏にもかかわらず、九合目以上で一面うっすらと雪が積もったと報告されており、天候が悪化すれば、真冬の寒さになるようだ。
蒸れて汗をかくと体が冷え、岩でビニールが破れてしまう
写真を投稿した環境省の富士五湖管理官事務所の担当者は8月10日、J-CASTニュースの取材に対し、9日は天気が悪かったため、午後から五合目の現地へ見に行ったと明かした。
「登山者は多くなかったものの、ビニール合羽姿の人たちは、数十人単位でいましたね。富士山では、珍しい光景ではないです。しかし、登山用ではない簡易的なもので、ビニールの素材はNGです。中が蒸れて汗をかくと、体が冷えてしまいます。耐久性もなく、岩に当たってビニールが破れたり、風で煽られてボタンが取れたりします。雨の後、富士山の登山道に残骸が落ちているのをよく見かけますね」
体が濡れて、風に当たり続けると、低体温症になって、命にも関わるようだ。
これに対し、登山用のレインウェアやレインジャケットは、ゴアテックスなど汗を逃がす透湿性の素材で作られており、手首や足首の部分は、ベロクロやボタンで閉められるため風を通さないという。
スタッフが声をかけた男性2人は、20代ぐらいの日本人だったといい、奥の女性2人はフランス人だった。
9日の18時15分ごろのことで、男性らが夜中に富士山に登ることについて、こんな見方をした。
寒さの中4、5時間もご来光を待つことになれば「ものすごくリスク」
「山小屋を予約している方もおられますが、多くの方がご来光を目指す弾丸登山だと思います。ゆっくり行く考えかもしれませんが、宿泊しなければ、山小屋では外でしか休憩できません。山頂までは、平均で6、7時間かかりますので、結局、夜中の0時や1時に早く山頂に着いてしまいます。そうしますと、一番寒い中で4、5時間もご来光を待つことになります。真冬の世界で、体感は氷点下になりますので、ものすごくリスクがありますね」
低体温症になる人が続出して、もう登らないように伝えられていたため、スタッフらは、男性らに行かないように勧めた。それでも行くなら、出発を遅らせるようにお願いしたという。
男性2人は、いったんインフォメーションセンターに戻ったが、フランス人の女性2人は、そのまま行った可能性があるとした。
「外国の方は、富士山の情報があまり得られておらず、旅行中のため日程を変えられずに登ってしまうことがあるのだと思います。ビニール合羽などで登る人も、外国の方が多い印象ですね。今回のことは、英語のツイッターで先に伝えました。もっとも、自分で判断して、途中から降りてこられた方もいらっしゃいます」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)