自民党の麻生太郎副総裁が2023年8月8日に台湾・台北市内で行った講演で、いわゆる「台湾有事」を念頭に「戦う覚悟」に言及したことについて、中国外務省は8月9日付で麻生氏を非難する報道官談話を出した。
談話では、台湾は中国の一部だという従来の立場を踏まえて、麻生氏の発言を「外部からの干渉」だと非難。清が台湾を日本に割譲することを決めた下関条約まで持ち出して、今の中国は清とは違うと主張。その上で「なぜこの日本の政治家は、台湾についてこのような不当な発言をできる立場や自信があると思っているのだろうか」と罵倒した。
「一帯一路の原則と日中間の4つの政治文書の精神に著しく違反」主張
麻生氏は講演の中で、台湾有事について
「今ほど日本、台湾、アメリカをはじめとした有志の国々に非常に強い抑止力というものを機能させる覚悟が求められている、こんな時代はないのではないか。戦う覚悟だ」
などと発言。この後、蔡英文総統と会談した。
中国外務省の談話では、一連の行動を「一帯一路の原則と日中間の(1972年の日中共同声明や78年の日中平和友好条約など)4つの政治文書の精神に著しく違反」していると批判。台湾問題は中国の内政問題だとする従来の主張を繰り返した上で、日本は台湾を統治している間「台湾の人々の抵抗を残虐に弾圧し、非道な犯罪を犯した」と主張した。これを受ける形で
「中国に対して犯した歴史的犯罪の責任を負う国として、日本はより一層、歴史から教訓を得て、慎重に行動する必要がある」
とした。
「台湾海峡が混乱しないことを恐れているかのようなポーズをとり...」
こういった主張に反する行動を取っているのが麻生氏らだというのが中国の立場で、次のように改めて非難した。
「台湾に渡航した日本の政治家たちは、常に戦争の話をし、台湾海峡が混乱しないことを恐れているかのようなポーズをとり、台湾の人々を奈落の底に突き落とそうとしている。現在の中国は、1895年に清国が下関条約に調印したときのような国ではない。なぜこの日本の政治家は、台湾についてこのような不当な発言をできる立場や自信があると思っているのだろうか」
下関条約は日清戦争の講和条約。清国が朝鮮の独立を確認し、遼東半島・台湾・澎湖列島を日本に割譲、日本に2億テールを賠償することなどが骨子だ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)