新型コロナウイルスの5類移行に伴い、4年ぶりに各地で花火大会が開催され、多くの人が訪れたと同時に、ごみのポイ捨て問題が報道され注目を集めている。花火大会等のイベントでごみをポイ捨てするとどのような影響があるのか。改善には何が必要か。J-CASTニュースは2023年8月3日、ごみ清掃員としても働き、ごみに関する情報を発信しているお笑いコンビ・マシンガンズの滝沢秀一さんに話を聞いた。
ポイ捨ての影響とは
2023年7月25日に開催された葛飾納涼花火大会には約77万人が来場、29日の隅田川花火大会では過去最多の約103万人が来場者したと報じられた。一方で、ごみのポイ捨てが問題視されている。ツイッター(現・X)上では、路上に捨てられた大量のごみの画像が投稿された。大規模な花火大会は今後も、8月5日に江戸川区花火大会やいたばし花火大会、8日にびわ湖大花火大会、26日に秋田・大曲の花火など全国で控えている。
ごみのポイ捨てはどんな影響があるのか。滝沢さんはまず治安の悪化を挙げた。
「ごみはごみを呼ぶみたいなところがあるので。綺麗ところにはなかなかポイ捨てしにくいけど、ごみがあるところは『ここだったら俺のごみくらい捨ててもいいや』みたいなことになる。お祭りとなるとすごい人なので、どんどんごみが増えていくみたいな状況になります。そういうところには犯罪が潜んでいたりもします。空き巣なんかは(ターゲットを決めるときに)ごみの集積所や落書き、放置自転車なんかを見ていると言いますから」
環境面に対する影響も指摘する。
「(ポイ捨てされたごみが)海に流れていくみたいなことですね。海のごみの8割ぐらいは陸から流れたゴミだと言われています。どこの街にも川はあるので、そこから海に流れていく可能性もありますね。ペットボトルなんか、ちょっとでも風が吹いたらすぐ流れていってしまいますからね」
集積所以外の場所にポイ捨てされたごみを最終的に片付けるのは誰になるのか。
「住民の方じゃないですかね。あと、自動販売機の横にあるリサイクルボックスも結構ひどいことになりますが、これはメーカーの人が回収する。ごみがあると気分が悪かったり、さらにごみが増えていくと困ったりもするので、(住民やメーカーの人が)『嫌だな』と言いながら片づけていると思います」
ごみ問題の解決には人の目が必要
花火大会等のイベントでのごみ問題はポイ捨てだけではない。滝沢さんは自身も高円寺の阿波おどりや阿佐ヶ谷の七夕祭りでごみを回収した経験があるといい、
「お祭りって『便乗ごみ』がよく出るんですね。便乗ごみというのは、お祭りの集積所に捨てられた家庭ごみや粗大ごみのこと。例えば壊れた椅子なんかを普通に捨てたらお金がかかってしまうけど、お祭りの集積所に入れてしまえば誰がやったか特定できないんです。こういうことをされたら、もう税金を使って処分するしかなくなりますね」
と、イベントで起きやすいごみ問題を説明した。滝沢さんはポイ捨てや便乗ごみの問題を解決するためには「人の目」が重要だと話す。
「この前仕事でフジロックに行って来たんですけど、ごみ捨ての拠点のような場所があって、そこに人が立ってるんです。その人たちが分別の指導もしてくれるので、ペットボトルはラベルを剥がしてキャップを取って......というようなことを意外とみんなきちんしてくれるんですね。やっぱり人の目があると全然違います。人件費もかかるので大変だとは思いますが、ただゴミ箱があるだけだと『誰も見ていないだろう』と適当に捨てちゃうかもしれないので、そういう風な管理が必要かもしれないですね」
「自分の行動がその先どうなるのかなって、ちょっと想像してくれたらなと思います」
滝沢さんは、花火大会等の参加者は「ポリ袋みたいなものを1個持って行くといいと思います」と提案。捨てられたごみがその先どうなるのか、誰が片付けるのかまで考えてみてほしいと話した。
「ポイ捨てをする人は気楽なんですよね。悪いことしてやろうとか、苦しめてやろうとか、何も考えてないと思うんですよ。でもそこの住民の皆さんが辛い思いや大変な思いをしたり、ごみを回収する業者さんにとってみたらお金がかかったりもします。それに、一時期はその辺に落ちていて海に流れた使い捨てマスクを、イルカが食べてしまうなんてことも聞きました。自分の捨てたマスクがイルカを苦しめるなんてなかなか思わないですけど、自分の行動がその先どうなるのかなって、ちょっと想像してくれたらなと思いますね」
滝沢さんは7月31日に監修本「地球と人にちょこっとやさしくなれる365日」(K&Bパブリッシャーズ)を出版しているが、これも気軽に環境やごみ問題について考えることがテーマだ。滝沢さんが主催するオンラインコミュニティの芸人仲間で考えた、環境にやさしいアクション等が365日分まとめられている。滝沢さんは「環境のためにやれることって、小さなことでも全然良かったりする。この本を朝起きた時に見てもらって、『これは今日やってみようかな』と始められるような内容です。やってみると意外と『あ、地球に優しいことをやってるんだな』と実感も出てくると思います。毎日できるちょっとずつのことをテーマに作ったので、気軽に環境問題に参加したいなという人におすすめです」と話した。
マシンガンズ・滝沢秀一さん プロフィール
ましんがんず・たきざわしゅういち お笑い芸人を続けながら2012年からごみ収集会社で勤務する。ごみ収集の体験記を多く出版するほか、ツイッター(現・X)でごみに関する情報を発信している。2020年にサステナビリティ広報大使就任。2023年に漫才賞レース「THE SECOND」準優勝。