ロシア外務省のザハロワ情報局長が2023年8月2日の記者会見で、8月9日に日本のロシア公館前で抗議活動が計画されているとして、「集会の黙認や失地回復論者的なレトリックをやめるべき」だと主張した。
8月9日は、1945年にソ連が日ソ中立条約を無視して対日参戦した日で、右翼団体は「反ソ連デー」「反ロシアデー」と位置づけて毎年のように抗議活動を展開している。ザハロワ氏は、抗議活動に「日本政府が直接関与している」と主張。対日参戦が「日本の主要領土で何百万人もの日本人の命を救った」として、改めて正当化した。
麻布警察署「当日、周辺地域では交通渋滞や騒音の発生が予想されます」
ザハロワ氏は、旧日本軍の細菌戦部隊「731部隊」の「職員表」が最近になって国立公文書館で見つかったことを念頭に、改めて日本の侵略行為を非難。これらの行為を日本政府が「忘れようとしている」例として、ロシア公館前の抗議活動を挙げた。
ザハロワ氏によると、1945年8月9日は「ソ連が軍国主義日本と敵対した記念日」。岸田政権は「集会の黙認や失地回復論者的なレトリックをやめるべき」で、皆が「集会を開くよりも、一生をかけて悔い改めるべき」だと主張した。
その上で、抗議行動について
「私たちは、こうした集会が演出されたものであることを知っているし、誰が主催しているのかも知っている。日本政府がこれに直接関与していることも知っているからだ」
などと独自の見解を披露した。ロシア公館前の抗議活動をめぐっては、公安調査庁ウェブサイトの「最近の内外情勢」22年8月9日の欄には、
「右翼団体が、『反ロデー』と称して、在日ロシア公館に対する抗議活動や『北方領土奪還』、『ウクライナ侵略反対』などを訴える街宣活動を実施(全国各地)」
とあるほか、警視庁ウェブサイトでは麻布警察署が
「8月9日(水曜)にロシア大使館周辺で大規模な警備を行います。当日、周辺地域では交通渋滞や騒音の発生が予想されます。皆様のご理解とご協力をお願いします」
と呼びかけている。
対日参戦で「血なまぐさい戦争の早期終結に決定的な貢献」主張
ザハロワ氏は
「ロシアや外国の歴史家が一般的に認めているように、赤軍は、血なまぐさい戦争の早期終結に決定的な貢献をし、日本の主要領土で何百万人もの日本人の命を救ったことに注目しよう」
と対日参戦を正当化する一方で、
「広島と長崎への米国の核攻撃がなければ、もっと多くの普通の日本人の命が救われていただろう」
とも主張。原爆投下を非難した。その上で、
「大使館前の(抗議活動の)バスが増えれば増えるほど、頻繁に(ロシア側が主張した)事実を思い起こすことになるだろう」
と述べた。
ザハロワ氏は6月28日の記者会見でも、対日参戦について
「流血を終わらせる決定的な貢献となり、日本列島に住む何百万人もの一般市民を含む多くの人々の命を救った」
と主張。8月9日が近づいたのを機に、改めて主張を展開した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)