熱中症にならないように、救急隊員がコンビニで飲料水を買うことを理解してほしい――名古屋市消防局がツイッターでこう呼びかけたところ、8万件以上の「いいね」が押された。
実は、この異例の呼びかけは、コンビニ立ち寄りへのクレームがあるからではないという。救急隊員が抱える別の深刻な事情があるというのだ。
「出動が増えて、隊員が休憩できない」と事情を説明
「大変な仕事ですから、そんな事は気にしないで」「職務を果たす上で休憩は当たり前。どうぞお体に気をつけて」「毎日お疲れ様です!」
名古屋市消防局が2023年8月2日、公式ツイッターで「重要なお知らせ」として、今回の投稿を行うと、こんなリプライが相次いだ。ネット上では、救急隊員などのコンビニ立ち寄りは、もう当然の権利だと受け止める人が多いようだ。
投稿では、「連続的な救急出動により、救急隊員が休憩時間を確保できない状況が発生しています」と事情を説明したうえ、次のように消防局が呼びかけた。
「隊員の熱中症予防と体力回復のため、救急車がコンビニなどに立ち寄り、飲料水を購入する場合があります。出動態勢は維持し、指令があれば迅速に出動します。ご理解とご協力をお願いします」
それでは、隊員が休憩できないほどの救急車の連続出動とはどんな状況なのだろうか。
この点について、市消防局の救急課は3日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように話した。
「連日の猛暑の影響もあって、7月の救急出動が過去最多になっています。昨年は、1万4735件と過去最多でしたが、今年は、1万5479件とそれも上回っています。コロナ搬送は昨年より微増しており、熱中症・脱水症が増えています。熱中症による搬送は、昨年7月が369件だったのが、今年は777件と倍増しています」
「昼も夜も食べられないことがあり、最悪コンビニに寄らせて」
熱中症が増えている背景には、コロナ禍が落ち着いて屋外に出かける人が増えたほか、屋内でも熱中症になる高齢者が多いことがあるという。
「古い家だとエアコンがなかったり、電気代が高いのもあったりして、エアコンを使えていない方が多いです。そもそもエアコンが嫌いな方もおられますね。そうしますと、寝ている間に脱水症状に陥りやすくなります」
そもそも、近年は、救急出動が右肩上がりになってきているという。救急車をタクシー代わりに使う人がいるなど、マナー悪化も要因の1つになっている。市消防局では、救急車48台で運用しているが、出動が多くなって、一番近い救急車で到着までに10キロ走るケースもあるとした。
「隊員の休憩は、日によっては、まったくないこともあります。救急車に乗りっぱなしということです。先日も、本部の救急隊が1日に10分ずつ2回休憩が取れただけのこともありました。昼も夜も食べられないことがあり、最悪コンビニに寄らせてほしいと、今回の投稿で呼びかけることにしました」
コンビニ立ち寄りに対するクレームについては、「今のところ入って来ていません。理解が進んでおり、とてもありがたいです」と話した。
とはいえ、休憩も取りにくい状況の中で、救急隊員がダウンしたりすることはないのだろうか。
「隊員が熱中症でダウンしたというのは、聞いていません。確かに、手がしびれたり汗が出て来なくなったりすることはありますが、救急需要が高いので交代できないです。隊員は、体を冷やしたり水分を摂ったりして、何とかしのいでいます」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)
【重要なお知らせ】
— 名古屋市消防局【公式】 (@NagoyaShobo) August 2, 2023
連続的な救急出動により、救急隊員が休憩時間を確保できない状況が発生しています。
隊員の熱中症予防と体力回復のため、救急車がコンビニなどに立ち寄り、飲料水を購入する場合があります。
出動態勢は維持し、指令があれば迅速に出動します。
ご理解とご協力をお願いします。 pic.twitter.com/0elEJ2o59U