3年4か月にわたってシリアの武装勢力に拘束され、2018年に帰国したフリージャーナリストの安田純平さん(49)が23年8月1日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見した。
安田さんは帰国後に旅券(パスポート)の発給を拒否されており、拒否は違憲だとして国を提訴。拒否は「見せしめ的にやったのではないか」などと訴えた。
旅券法が「ジャーナリストの取材を妨害する手段として、非常に便利に使われている」
安田さんは拘束時に旅券を奪われたため、新たに発行された「帰国のための渡航書」で帰国。帰国後の19年1月に旅券発給を申請したところ、外務省は7月に旅券法第13条を根拠に発給を拒否した。
旅券法第13条では、「一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる」要件のひとつとして、「渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者」をうたっている。外務省は、安田さんが18年10月24日、帰国する際の経由地だったトルコから5年間の入国禁止措置を受けたと主張。この点を根拠に発給を拒否している。
安田さんは20年1月、発給拒否の取り消しを求めて、国を相手取って提訴。代理人の岩井信弁護士によると、大きく(1)旅券法違反の事実がない(2)旅券法の条項自体が憲法違反(3)仮に条項自体が違憲でなくても、今回の経緯で旅券発給を拒否するのは違憲(4)外相は裁量権を逸脱して恣意的で違法な処分をしている――の4つを主張。10月6日に最終準備書面を提出して結審する予定で、判決はその3~4か月後を見込んでいる。
安田さん側は、帰国時にトルコ政府から強制退去や入国禁止通告された事実はないと主張。外務省が主張する入国禁止命令は後付けの「自作自演」だったと反論している。
ロシア外務省は22年5月、岸田文雄首相ら日本人63人を入国禁止することを発表している。このように、日本人がある国から入国禁止になること自体は珍しくなく、入国禁止を根拠に安田さんだけ発給を拒否されるのは不当だとも訴えている。安田さんは
「大きくニュースになった人物なので、はっきり言って見せしめ的にやったのではないか」
とみている。旅券法第13条を念頭に「ジャーナリストの取材を妨害する手段として、非常に便利に使われている法律なのではないか」とも話した。