新型コロナウイルス感染のリスクを理由に休場を申し出たが認められず、引退を余儀なくされたとして、日本相撲協会などを提訴している元力士の柳原大将(だいすけ)さん(25)が2023年7月31日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見を開いた。
提訴は23年3月だったが、「日本のメディアは残念ながら、この問題について正確には取り上げてくれない、もみ消されてしまう可能性がある」として、改めて特派員協会で会見。所属していた佐渡ケ嶽部屋では、賞味期限が5年前の腐った肉を食べさせられるなどの「反社会的行為」が横行していたと主張した。その上で「相撲界でまっとうに子どもたちが相撲を取れる環境を作りたい」などと話した。
加工年月日は「11.11.26」、賞味期限は「12.1.5」
柳原さんによると、21年1月に開かれた初場所について、柳原さんは自らが患っている心臓疾患による重症化のリスクを感じ、師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)を通じて協会に休場を申し入れた。だが、協会は「疾患があろうとなかろうと、感染のリスク回避を理由に休場は不可能」と拒否。柳原さんが親方に「それなら自分は引退するしかないのでしょうか」とたずねたところ、親方は「そうだな」と返答したという。柳原さんは「死のリスクを冒して出場するか、引退するか」を迫られた。訴訟では、協会は可否を慎重に判断すべきで、親方には柳原さんから事情を聞き取って協会に申し入れるべき義務があったが、両者はいずれもそれをしなかった「義務違反」があったと主張。慰謝料などとして計約415万円を支払うように求めている。
訴訟では、佐渡ケ嶽部屋で「人権侵害」が起きていた点も争点にしている。柳原さんは「部屋の冷凍庫にあった、緑のカビが表面に生え、冷凍焼けを起こして腐った肉を頻繁に食べさせられた」と主張した。
その証拠として、17年1月13日に母親に送信したLINEの画像が投影された。LINEのメッセージにはパック入りの肉の写真がついており、ラベルは「山形県産牛 黒毛和種 リブロース」と読み取れる。そこに書かれている加工年月日は「11.11.26」、賞味期限は「12.1.5」。LINEは、この肉を食べて大丈夫か尋ねる内容で、母親は「アカンやつやん!あと、11って2011年ってことやろ!ぜったい!アカンって」と返信している。
協会側は「腐った肉食べさせられた」主張に「事実無根」と反論
さらに、部屋に貼られていた張り紙だとされる写真も投影。そこには
「各居室内にお菓子やジュース等置いてあった時点で その居室の全員が罰金二万円」 「部屋外で食べたり飲んだりした場合は罰金三万円」
と書かれていた。
柳原さんは、こういった行為を「全て反社会的行為だと思う」と批判。その上で
「未成年を奴隷扱いする力士という職業そのもののシステムの曖昧さ、そして、それらを作ってる日本相撲協会の現状、それらがおかしいことを世間の人に知ってもらいたい、相撲界でまっとうに子どもたちが相撲を取れる環境を作りたい」
などと話した。
協会と佐渡ヶ嶽部屋は全面的に争う構え。腐った肉の写真については、捨てるときの写真に過ぎず、食べるときの写真ではないとして「事実無根」だとすると答弁書を提出している。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)