ビッグモーター「強すぎるリーダーシップ」で神格化も? 家族経営の専門家語る問題点...不祥事は「典型的な悪い側面」

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   保険金の不正請求をはじめさまざまな不祥事が報じられている中古車販売大手ビッグモーター(東京都港区)が2023年7月25日に開いた記者会見で、和泉伸二新社長は「(兼重宏行前社長の)余りにも強すぎるリーダーシップに頼りすぎていた」と発言した。一連の不祥事は「強すぎるリーダーシップ」が一因として考えられるのか。ビッグモーター流の家族経営(ファミリービジネス)の問題点とは。J-CASTニュースは28日、ファミリービジネスを専門とする麗澤大学の近藤明人教授に話を聞いた。

  • ビッグモーター(写真:つのだよしお/アフロ)
    ビッグモーター(写真:つのだよしお/アフロ)
  • 兼重宏行前社長と、和泉信二新社長。ビッグモーター公式サイトより(編集部加工)
    兼重宏行前社長と、和泉信二新社長。ビッグモーター公式サイトより(編集部加工)
  • ビッグモーターは資産管理会社の100%子会社(ビッグモーター公式サイト内調査報告書より)
    ビッグモーターは資産管理会社の100%子会社(ビッグモーター公式サイト内調査報告書より)
  • ビッグモーター(写真:つのだよしお/アフロ)
  • 兼重宏行前社長と、和泉信二新社長。ビッグモーター公式サイトより(編集部加工)
  • ビッグモーターは資産管理会社の100%子会社(ビッグモーター公式サイト内調査報告書より)

「家族経営のあかんやつ」との声も

   保険会社への保険金不正請求のほか、同社店舗前に植えられた街路樹への除草剤散布疑惑やグループLINEでのパワハラなどが報じられている同社。国土交通省は27日に各地方整備局へ街路樹枯死問題について調査を指示、28日には保険金不正請求について全国34店舗を立ち入り調査したと報じられた。

   一連の不祥事について、26日に退任するまでは兼重宏行前社長の息子・宏一氏が副社長を務めていたことから、ツイッター(現・X)上では「家族経営のあかんやつ」「非上場&家族経営の悪い見本みたい」などと指摘する声も多い。

   会見で和泉新社長は「非公開企業であることから客観的な目線が希薄になりコンプライアンスの低下を招いた」「行き過ぎた業績管理、不合理な目標設定、頻発する降格人事、こういったものにより徐々にいびつな企業風土を作ってしまった」とも発言した。

ファミリービジネスの観点からの問題は

   ファミリービジネスの観点からの問題として、近藤教授は「(第三者委員会の調査報告書によると)人事の上げ下げが激しいということだったので、(兼重前社長の)絶対的な権力に従わなければいけなかったというのは調査の結果から明らか。強いリーダーシップは必ずしも悪いものではなく、創業時には実績がないため、うまく企業を経営するためにはカリスマ的な能力が必要になってくる。しかし、その『強すぎるリーダーシップ』は組織の規模の巨大化に伴って、従うしかない状況になったのではないか。人によっては(兼重前社長を)神格化していたのでは」とし、「この調査報告書の事実も踏まえると、そういったことがこの不祥事に繋がってきているように見える。典型的にファミリービジネスの悪い側面だと思う」とした。

   ではファミリービジネスの特徴とは。近藤教授は一つ目に「ビジネスを通した社会貢献をする企業が多いこと」を挙げた。「長寿企業の多くは、従業員との関係性や地域との関係など目に見えない資産を大切にしている。自己利益の追求よりも、お客様のために、従業員のために、あるいは地域のためになどという考え方(ファミリー性)を持っている」という。さらに「従業員を大切にしている会社は儲かっているし、業績も上がっているし、長く続いている。それはちゃんとデータをとって検証した結果」とした。

   「(ビッグモーターの)調査報告書の最後の方に経営理念があるが、『常にお客様のニーズに合ったクオリティの高い商品、サービス、情報を提供する』とのこと。おそらくそれがファミリーの作り出す価値になってきて、徹底して実践していれば、間違った方向には行かなかったのではと思う」

   2つ目の特徴として、所有と経営が一致することにあるという。そのため「会社を私物化していく方向に行けば今回のような不祥事が起こる」とした。

「ファミリーガバナンス」も必要

   18日、ビッグモーターは「コーポレートガバナンスの機能不全」があったとし、社外取締役を迎え入れると発表したが、近藤教授は、「上場していない企業かつこれだけ大きな会社で、社外取締役もいなかったということで、客観的な視点で監視ができなかったというコーポレートガバナンスの問題はある」としつつも、ファミリービジネスにおいては「ファミリーガバナンス」も必要になってくるという。

   ファミリーガバナンスとは「ファミリーの価値観や『ファミリーでこういう取り組みをしますよ』という、企業でいう経営理念や企業理念みたいなもの」とし、「それに関係してファミリーの企業への関与の方法やファミリーの会議の運営方法、株や資産の保有方法を決めていく」とした。

   近藤教授は、兼重親子の資産管理会社であるビッグアセットがいまだビッグモーターの株を100%保有していると報じられていることに触れ、「兼重前社長の影響力は100%残っている。ファミリーガバナンスという仕組みを入れていかないと、再発する可能性はすごく高い」とした。

和泉新社長がすべきことは

   今後ビッグモーターが再建を目指すとして、和泉新社長がすべきことは何か。「資産管理会社が100%株を持っているため、何ができるのかは問題」としつつも、「第三者性をきっちり担保できる実績のある社外取締役の方に入ってもらい、検証活動を継続的にする必要がある。また、外部の取引先や社員のための通報窓口を組織の外に設置する、情報の開示をするなどし、より透明性を高めることも必要。ファミリーの良さも残しつつ、変えるべきところは変えていくことが大切だ」とした。

   近藤教授はビッグモーターの今後について「おそらく会社として良くないことがたくさんあったと思いますから。規模も大きくした責任、多くの社員を雇った責任を果たすために、ファミリーが利益を得るような企業の存続よりも、そこに関わっている人たちの未来や利益を考える改革でないと、本当に苦しむ人たちがどんどん増えてしまうと思う。新社長にはそこに注力してもらいたい」と語った。

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