太平洋戦争に赴いた旧日本兵が持参した「寄せ書き日の丸」と呼ばれる日章旗のうち、米国の博物館に約29年にわたって展示されていた1枚の持ち主が見つかり、遺族に返還されることになった。
返還に取り組んでいる米NPO「OBON(オボン)ソサエティ」(オレゴン州)が2023年7月27日に東京都内で記者会見し、返還までの経緯を説明した。出征時の集合写真に写っていた日章旗に書かれた文字と、博物館に展示されていた日章旗の文字が一致したことから持ち主を特定、返還が決まった。
寄贈の経緯は不明で「その旗の真の意味は29年間知られてこなかった」
返還される日章旗は、岐阜県出身の陸田(むつだ)繁義さんが出征時に持っていたもの。日の丸の上に、右から「武運長久」の文字。右には陸田さんを指すとみられる「睦田繁義君」とある。日の丸の周辺には、住んでいた地域の住民や親族によるとみられる数十人分の署名がある。
日章旗は、米テキサス州のUSSレキシントン博物館に展示されていた。元々は航空母艦で、リニューアルを経て92年に博物館としてオープン。その2年後の94年に寄贈された。ただ、どういった経緯で持ち込まれたかは明らかではなく、スティーブ・バンタ館長によると、「その旗の真の意味は29年間知られてこなかった」状態で額縁に入れて展示されていた。
日章旗が展示されている様子を写真で見た陸田さんの遺族が23年4月にOBONソサエティに「米国にある祖父の遺品を返してもらえるよう手助けをしてほしい」と連絡。OBONソサエティが博物館に連絡して事態が動いた。陸田さんの出征時の集合写真に日章旗が写っており、写真の提供を受けた博物館が現物と突き合わせた。バンタ氏は、当時の経緯を
「この博物館に飾られている旗と、(写真に写っているのと)同じような角度から同じような方向で見たところ、全く同じものが浮き上がってきた」
と説明した。