高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
ビッグモーター不正請求問題に国交省・金融庁動く...行政対応の焦点は?

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   ビッグモーターは、自動車の販売から買取・車検・修理・板金塗装・損害保険・リースなど自動車に関するサービスすべてに対応する「ワンストップショッピング型」の店舗を全国で展開している企業だ。資本4億円、従業員6000人の会社であるが、非上場である。積極的なCM戦略でも有名な企業だ。

  • ビッグモーター(写真:ZUMA Press/アフロ)
    ビッグモーター(写真:ZUMA Press/アフロ)
  • 辞任した兼重宏行社長(左)と、和泉信二新社長。ビッグモーター公式サイトより(編集部加工)
    辞任した兼重宏行社長(左)と、和泉信二新社長。ビッグモーター公式サイトより(編集部加工)
  • ビッグモーター(写真:ZUMA Press/アフロ)
  • 辞任した兼重宏行社長(左)と、和泉信二新社長。ビッグモーター公式サイトより(編集部加工)

それぞれの法律の所管官庁である国交省と金融庁が動いている

   ビッグモーター社内で自動車保険の契約について、目標額に達しない社員には「罰金」が課せられるというノルマが以前報じられていた。

   2023年2~6月、国土交通省は複数の店舗に対し民間車検場としての適切な検査を実施していないとして行政処分を行った。

   今回、板金や塗装部門において不正請求があるとの損害保険会社の業界団体への内部告発が2021年秋頃あったが、2023年1月30日に特別調査委員会が設置され、7月に報告書が公表された。関係者による報道でその内容が明かされている。

   それらによれば、全国に33あった整備工場のうちすべての工場において、修理案件の4割超で事故車修理費用の水増し請求の疑義があったという。具体的には、車体に故意に傷を付けたり、損傷がないのに板金塗装をしたりして修理費用を水増ししたようだ。

   報告書では、各工場がノルマを課されて現場社員が水増し請求せざるを得なかったとしていることも報道されている。

   自動車整備業(車検)については車両運送法、保険代理店について保険業法の規制があるので、両業務を行っていたビッグモーターにはそれぞれの法律の所管官庁である国交省と金融庁が動いている。

国交省の処分は拡大するだろう

   不祥事が発覚してから、記者会見を行わなかったが、25日の会見で代表取締役だった兼重宏行氏の辞任が発表された。

   国交省の処分は6月までにもあったが、今後はこれがさらに拡大するだろう。

   金融庁はどうなるか。損保会社は、水増し請求をされたので被害者でもあるが、それだけでは金融庁が動くことはない。ここで、金融庁が動く根拠が、ビッグモーターが損害保険代理店であることだ。一部の報道によれば、自動車事故があった場合、損保会社はビッグモーターを紹介し、ビッグモーターは紹介数に応じて損害保険代理店として扱った自賠責を損保会社につないでいた。

   要するに、ビッグモーターが損保会社に水増し請求すると、損保会社も自賠責保険で儲かるという「もたれ合い」がある。損保会社からビッグモーターへ出向社員を派遣しつつも、水増し請求が長年慣行として行われてきた背景があろう。金融庁はその点に着目しているはずだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。


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