プロボクシングのWBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトル戦が2023年7月25日、東京・有明アリーナで行われ、挑戦者・井上尚弥(大橋、30)が王者スティーブン・フルトン(米国、29)を8回TKOで下し新王者となった。ライトフライ級、スーパーフライ級、バンタム級に続いて世界4階級制覇を達成した。
7ラウンドは3ジャッジ全員フルトン支持
スーパーバンタム級転向初戦で2団体統一王者に圧勝した井上。スピード、パワー、テクニック...勝因はどこにあったのか。J-CASTニュースは多くの世界王者を生み出したTMKジムの金平桂一郎会長(57)に分析してもらった。
試合は1ラウンドから井上がプレッシャーをかけていった。左ジャブを上下に散らし、リズムよくフルトンの顔面とボディーに打ち込みポイントを重ねていった。これに対してフルトンは当初ディフェンシブなスタイルだったが、途中から距離を縮めてパンチを交換。井上の強打にカウンターを合わせにいった。
7ラウンドは3人のジャッジ全員が10-9でフルトンを支持。流れがフルトンに傾いたかと思われた直後の8ラウンドに勝負が決した。
金平会長は、8ラウンドに井上が最初にダウンを奪ったシーンに注目した。井上は左ジャブをボディーに当て、右ストレートを顔面に打ち込んだ。一瞬腰を落としたフルトンに左フックを叩き込みダウンを奪った。
金平会長は、このダウンの伏線は1ラウンドにあると指摘した。
「フルトンは随所に研究の跡が見られた」
「井上選手は今までの試合とは異なり、初回から左ジャブをフルトン選手のボディーに持っていきました。恐らく作戦だったと思います。普通の選手の左ジャブのボディーならばそれほど効果的なパンチではないですが、井上選手の場合、普通のストレートパンチよりも威力がある。当然、フルトン選手は警戒してガードします。普段なら気にすることのないボディーへのパンチに細心の注意を払わなければなりませんでした」
そして「8ラウンドのダウンシーンを見ると、井上選手のボディー打ちに対してフルトン選手は左腕を下げてガードします。その瞬間、ガードが空きました。井上選手はその隙をのがさず右を打ち込みダウンを奪いました。恐らく狙っていたのでしょう。1ラウンドから続けて出していた左ジャブのボディー打ちが伏線となってダウンを呼び込んだと思います」と解説した。
井上は最初のダウンから立ち上がってきたフルトンを逃さず、連打でコーナーに追い詰めフィニッシュ。レフェリーが両者の間に割って入り試合終了を宣告した。
一方、敗れはしたもののフルトンに関して金平会長は「井上選手をよく研究していたと思います。随所に研究の跡が見られました」と評価し、「フルトン選手はそれなりの準備をしてきていたし、見ごたえのある試合でした。ただパワーが井上選手を脅かすまでには至りませんでした。井上選手との決定的な違いは決定力。埋めようがないほどの決定力の差があったと思います」との見解を示した。
THE MONSTER KNOCKOUT! ??#FultonInoue pic.twitter.com/UafwDtKKgX
— ESPN Ringside (@ESPNRingside) July 25, 2023