中古車販売大手ビッグモーター(東京都港区)の兼重宏行社長が2023年7月25日に開いた記者会見は、保険金の水増し請求など一連の不正行為について「本当に許しがたい」などと従業員に責任転嫁したことで、かえって世論が同社に向ける目は厳しくなった。
今回のように、記者会見でかえって「傷を深める」事例は枚挙にいとまがない。J-CASTニュースでは、2000年以降に不祥事をめぐって注目された記者会見をピックアップ。記事末尾の投票フォームから、一番「衝撃的」だった記者会見の投票を募っている。選択肢にないものはコメント欄への書き込みを受け付けている。結果は追って報じる予定。
00年代には船場吉兆「ささやき女将」など
謝罪会見で批判が強まってしまう原因はさまざまだが、その多くが、事件や事故を起こした側としての立場を逸脱した行動に出てしまった場合だ。大きく5つのケースを見ていきたい。
00年に起きた雪印乳業の集団食中毒事件では、石川哲郎社長が記者会見を打ち切ってエレベーターに乗った際、記者に詰め寄られると、記者を指さして「私は寝てないんだ」。直後に記者は「こっちだって寝てないんですよ!そんなこと言ったら!」と反発し、一連の様子がテレビで報じられて世論の批判を浴びた。02年に起きた雪印食品の牛肉産地偽装問題と合わせて、雪印グループ解体の一因になったと受け止められている出来事だ。
07年には高級料亭の船場吉兆で賞味期限偽装や産地偽装の問題が発覚。記者会見で湯木喜久郎取締役が記者の質問に答えられずにいると、脇に座った母親で女将の佐知子取締役が答弁内容を指示する声をマイクが拾い、筒抜けになっていた。指示されたとおりに答弁する様子は「腹話術のようだ」と揶揄され、佐知子氏は「ささやき女将」と呼ばれるようになった。船場吉兆は08年に全店舗を閉鎖して廃業している。
14年には、新型万能細胞「STAP細胞」をめぐる会見も話題になった。理化学研究所の研究員だった小保方晴子氏が筆頭著者の論文が英科学誌「ネイチャー」に掲載されたが、直後から疑問の声が噴出。4月に小保方氏が会見を開き、STAP細胞を「200回以上作製に成功した」などと反論した。会見での「STAP細胞はありまーす!」という言葉は14年の流行語大賞の候補にもノミネートされた。だが、論文は7月に撤回され、その時点でSTAP細胞の科学的意義は失われた。小保方氏は12月に理研を退職している。
ベッキーは質疑なし&交際否定→続報で撃沈
芸能界でも会見の対応が原因で傷を深くする事例がある。たとえば16年1月に発覚したベッキーさんの不倫事案だ。1月7日の「週刊文春」発売を前に1月6日に開いた記者会見で、ベッキーさんは何回も頭を下げながら「友人関係であることは間違いありません」などと説明し、交際は否定。記者会見は4分半で、質疑応答はなかった。その後の1月21日発売の「文春」では、ベッキーさんが会見を開く2日前に送信したとされる「友達で押し通す予定!笑」といったLINEメッセージの内容が暴露され、会見での発言の妥当性が問われる事態に発展。1月末には活動休止に追い込まれた。
技術を理解していないことが露見して問題になることもある。19年7月には、サービスを開始したばかりのセブン&アイ・ホールディングスのキャッシュレス決済サービス「7pay」が不正アクセスを受けた。運営会社の小林強社長が7月4日の記者会見で「2段階認証」を導入していなかった理由について問われて答えられず、「2段階うんぬんと同じ土俵で比べられるのか、私自身は認識していない」と答え、社長の資質を問う声が相次いだ。サービス開始からわずか1か月後の8月1日、9月30日に廃止することが発表された。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)