袴田事件、なぜ検察は有罪立証しようとするのか 弁護団が示した見立て

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   1966年6月に静岡県清水市(現静岡市)のみそ製造会社専務宅で起きた一家4人殺害事件「袴田事件」で死刑が確定した袴田巌さん(87)の裁判をやり直す再審公判を控え、姉の秀子さん(90)と弁護団事務局長の小川秀世弁護士が2023年7月25日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見した。

   静岡地検は7月10日、有罪立証する方針を静岡地裁に伝えており、審理は長期化する可能性もある。秀子さんは「これからは、もう一息」だと決意を語った上で、検察の方針には「『まあ、どうぞ』という感じでございます」と話した。

  • 記者会見する袴田秀子さん(左)と弁護団事務局長の小川秀世弁護士(右)。小川氏は資料を使って「5点の衣類」について説明している
    記者会見する袴田秀子さん(左)と弁護団事務局長の小川秀世弁護士(右)。小川氏は資料を使って「5点の衣類」について説明している
  • 袴田巌さんの近況を説明する姉の秀子さん
    袴田巌さんの近況を説明する姉の秀子さん
  • 記者会見する袴田秀子さん(左)と弁護団事務局長の小川秀世弁護士(右)。小川氏は資料を使って「5点の衣類」について説明している
  • 袴田巌さんの近況を説明する姉の秀子さん

「早く袴田さんに、無罪の判決を聞かせてあげたい」

   再審では、確定判決で犯行時の着衣とされた「5点の衣類」の評価が焦点になるとみられる。衣類は事件から約1年2か月後、みそタンクから発見。血痕の赤みが残っていた。再審開始を決めた23年3月の東京高裁決定では、弁護側の実験結果などに基づき、約1年2か月もタンクに入っていた状態では衣類に赤みは残らないと判断。捜査機関が証拠を捏造した可能性が高いと指摘していた。

   だが、7月10日に明らかになった検察の方針によると、補充捜査の上で衣類に「赤みが残る」場合があることを主張し、捏造を否定することにしている。

   小川氏は「警察が最初から袴田さんを犯人ではないということを知りながら、真犯人を逃がすために、証拠の捏造などを繰り返して、袴田さんを犯人に仕立て上げた」と主張。巌さんの証人尋問などを行わず、証拠の議論だけで有罪の主張を退け、「早く袴田さんに、無罪の判決を聞かせてあげたい」と話した。

   死刑事件で再審開始が確定したのは過去に4件あり、袴田さんのケースが5件目。4件はいずれも再審公判で無罪が言い渡されており、袴田さんのケースでも無罪になる公算が大きい。それでも検察が有罪立証を試みる理由を問われた小川氏は、二つの可能性を挙げた。ひとつが、「有罪はもう無理であっても、せめて捏造だということだけは認めさせたくない」点。先ほどの衣類の「赤み」についても「有罪の立証に使える新証拠ではなく、捏造を否定するための新証拠しかない」と説明した。

   もうひとつは、「ちょっと嫌な話ですけれども...」と前置きした上で、

「時間を稼いで、それこそ秀子さんや巌さんが倒れて、皆さんがこの事件のことを、今ほど関心を持たなくなってくれることを、期待しているのではないか」

と説明した。

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