広島県尾道市が「先輩パパからあなたへ」と題して妊婦向けに配布した文書が、ツイッター(現・X)で批判を集めている。家事・育児や夫への配慮を求められている、とも取られかねないアンケート結果が紹介されていた。
市の担当課は取材に、2023年7月24日までに配布中止したといい、「性別による役割というものを、固定的に捉えるような意識を助長する可能性がある表現方法だった」と答えた。
「赤ちゃんの世話で忙しく、家事ができていない」
発端となったのは23日の投稿。「産前産後のパパの気持ち」をランキング形式でまとめた文書が、市から妊婦に届いたと伝えられた。3つの設問に対する100人アンケートの結果が記されている。
まず「妻のこういう態度(言葉)が嫌だった」という項目は、1位が「わけも分からずイライラしている 少しのことでイライラして当たられる」、2位が「赤ちゃんの世話で忙しく、家事ができていない」、3位が「何もしてくれない 子供の面倒をみてくれない」。
ほか、「妻にしてもらいたいこと」の2位で「今のままでよい 十分やってくれている」と思いやりを感じさせる回答がみられた一方、「妻にしてもらってうれしかったこと」の3位に「マッサージ」が挙がるなどしている。
取り組みに疑問を呈すような投稿は拡散され、Xユーザーからは、「出産や育児に不安を抱える妊婦に対して、育児の当事者意識がない先輩パパからのメッセージを届ける意味がわかりません」「産後鬱にさせたいの???」といった声が上がった。
広島県尾道市役所・健康推進課の課長は24日、当該文書は妊娠7か月の妊婦を対象とし、同課が18年4月に発行開始したとJ-CASTニュースの取材に答えた。作成時から内容は変えていない。
妊娠届を受けた際、父に対しても同様の文書を配布していると課長は話す。発行開始は同時期で、先のアンケート3項目が先輩ママ目線に置き換えられているほか、「夫に言われてうれしかった言葉」のランキングもある。
いずれも、ツイッターの反響を受けて24日までに配布を停止した。「アンケートの結果など、性別による役割というものを、固定的に捉えるような意識を助長する可能性がある表現方法だった」と述べる。
反響受け、「真摯に反省」
そもそもの実施経緯についてはこのように説明した。
「当時とすれば、お父さんお母さんの性別によって考え方が違う場合が大きかったので、そういうところを知っていただき、分かったうえで協力しあうことで、子育てがしやすくなるのではないかというような思いがあった」
制作は未婚や育児中など立場は様々の女性職員が担い、管理職は男性だったと振り返る。配布の仕方については、「配る配らないという部分もありますし、(父・母向けを配布するタイミングは)一緒の方が良かったのかなというところもあります」と見解を伝える。
今後については、「お配りするとしたらどういうものが良いかは、改めて内部でも検討させていただければ」と述べる。
「これだけ反響があるということはご不快になられている方も沢山いらっしゃると思いますので、そこの部分は真摯に反省・謝罪をして、もう一度、今お配りしている資料も精査しながら、きちんとしたものを皆様にお配りできるように努めていきたい」