パスタを茹でるときに塩を加えるのはいったいなぜか。SNSでたびたび話題になっている。麵に下味をつけるほかに何らかの目的があるのか、様々な考察が飛び交っている。
業界団体・日本パスタ協会によれば、塩を用いるのには3つの理由がある。2023年7月21日、J-CASTニュースの取材に対し詳しく解説した。
「水1リッターにつき塩5~10gが目安」
ツイッターでは7月中旬ごろから、塩を加える理由は下味のためだけではないかと話題になっている。塩を入れるタイミングについても疑問の声が広がっていた。
日本パスタ協会は、国内の乾燥パスタ(法令では「マカロニ類」)のメーカーが加盟する業界団体だ。公式サイトで「パスタの美味しい茹で方」を次のように紹介している。
「鍋に水を入れて火にかけ、グラグラ沸騰したら塩を加えます。パスタ100gにつき水1リッター、水1リッターにつき塩5~10gが目安」
動画では「塩をたくさん入れる3つの理由」として、1)パスタに下味をつける、2)沸点を上げる、3)アル・デンテを作りやすいを挙げている。
取材に対し協会は、乾燥パスタはうどんと違って製造時に食塩を加えていないため、下味をつけるために塩を加えると説明する。
「ベース(麺)に下味が付いていればソースと絡んだ時に味が引き立つメリットがあります」
ほか2つの理由についても詳しく尋ねた。
塩を入れることで「沸点」があがる
協会によれば、常温では蒸発しない塩を水に加えることで、沸点が高くなる。つまり水は一般的に100度で沸騰するが、それよりも高い温度でパスタを茹でることができる。
「どうして美味しくなるのか理由は難しいですが、例えば非常に気圧の低いところ(富士山の山頂付近など)では水は低い温度で沸騰します。こういうところで麺類を茹でても美味しく作れなかった経験があります。
一方で当協会が勧めるパスタの茹で方では、沸騰後に麺が鍋の中で軽く動く程度の火力に調整するというのがあり、なるべく高い温度で、かつ、優しく茹でられるという意味があると思います」
火加減は、お湯がふつふつと沸騰して吹きこぼれず、パスタが湯の中でゆらゆらと揺れる程度がいいという。吹きこぼれるほどグラグラと煮立てると、パスタの表面が溶け出してべたついてしまうそうだ。途中の差し水も「厳禁」としている。
続いて、アル・デンテを作りやすくなるとはどういうことか。
「パスタはうどんなどでよく言われる『もちもち感』よりはシャキッとした歯ごたえが持ち味です。アル・デンテ(al dente)のdenteはイタリア語で『歯』の意味です」
協会は、「食べるときにアル・デンテ(イタリア語で歯応えのあるという意味)」になることが理想だとしている。パスタの中心に針先ほどの芯が残っているような食感だ。パッケージに記載のゆで時間は、アル・デンテにするための標準的な時間であり、塩を適量入れることを前提にしていると述べた。