フィリピン人女性と虚偽の婚姻届を提出した男性が「偽装結婚をしたものの、別の女性と結婚できないので戸籍から削除したい」と自ら警察に相談したことで偽装結婚が発覚し、相談に来た男性を含む3人が警視庁に逮捕されたと、2023年7月12日に各メディアが報じた。なぜ偽装結婚に応じる人がいるのか。婚姻関係を解消する方法はあるのか。J-CASTニュースは18日、まこと法律事務所の水谷真実弁護士に取材した。
逮捕されるとほぼ起訴に
各メディアの報道によると、警視庁は飲食店運営会社の社長、同社役員、フィリピン人女性と婚姻関係を結んだ無職の男性の3人を、電磁的公正証書原本不実記録・同供用の疑いで逮捕した。社長らは運営する飲食店でこのフィリピン人女性を長期間働かせる目的で偽装結婚させたとみられる。
そもそも偽装結婚とはどのような罪になるのか? 偽装結婚した人の弁護経験がある水谷弁護士は「今回の事件もそうですが、『電磁的公正証書原本不実記録・同供用』の罪等に問われるでしょう。婚姻の意思がないのに婚姻届を提出し、戸籍の原本である電磁的記録に不実の記録をしたということですね」とした。
偽装結婚で捕まった場合、「境遇など情状を総合的に考慮して、検察官が最終的に起訴するか決めますが、起訴されることが多いのではないでしょうか」という。水谷弁護士が担当したケースでも、貧困のためやむを得ず偽装結婚した男性は不起訴処分になったが、それ以外は起訴されたという。さらに「逮捕された人が外国人の場合は特に、言葉の問題があったりサポートしてくれる人が限られたり等で、日本人と比べて困難が伴う場合がありますね」と実情を説明した。
目的は配偶者ビザ、金銭が絡むケースも
水谷弁護士によると、偽装結婚の目的は「日本人と外国人の結婚や外国人同士の結婚の場合は、今回の事件と同様、配偶者ビザ取得によってより長期間滞在することが目的である場合が多いのではないでしょうか」とする。外国人でも永住権を持っていれば、その配偶者も長期間日本に滞在できるため、外国人同士で偽装結婚するケースもあるという。
ではなぜ日本人や永住権を持つ外国人は偽装結婚に応じるのか。水谷弁護士は「金銭的な利益のために応じることが多いと思います」とした。
報酬を受け取ることについて、水谷弁護士は「お金の受け渡し自体が罪に問われることはありません。ただし、婚姻の意思がないのにお金を受け取った対価として婚姻届を提出したら、先ほど述べた『電磁的公正証書原本不実記録・同供用』の罪等に問われるでしょう」と言う。
婚姻関係を解消するには
偽装結婚をしてしまった人が婚姻関係を解消するにはどうしたらよいのか。水谷弁護士は「婚姻意思がないのに偽って結婚した場合は、婚姻無効の裁判を提起すること等が考えられます。刑事事件になった場合は、捜査機関から自治体へ連絡が行くなどして何らかの形で戸籍の訂正がなされるのではないでしょうか」とした。
今回の事件では、フィリピン人女性と婚姻関係を結んだ男性が別の女性との結婚を希望したために警察に相談したと見られる。偽装結婚をした人が婚姻関係を解消しないまま、別の人と事実婚のような関係になった場合はどうか。水谷弁護士は「先ほど述べた、婚姻無効の裁判を提起すること等が考えられます。その後、結婚することが考えられます」と言い、婚姻無効にして事実婚の人と結婚することも不可能ではないとした。
仮にこのケースで男性が亡くなった場合についても話を聞いた。水谷弁護士は「相続の問題が生じます。状況にもよりますし、複雑な話ですので、一概にこうだとは言いにくいです」とした。